里親へのインタビュー
【養育里親】
Yさんご夫婦(夫:Nさん 50代 妻:Uさん 40代)
Iくん 年長
※2023年9月現
同じ職場働いていたYさんご夫婦。現在も里母のUさんが勤め、里父のNさんが日々の養育をされています。どのような経緯で里親となり、養育をされているのか。まだ数少ない家庭のスタイルですが、ご家庭への想いや子育て観、また里親となるまでの心境を、里父Nさんが丁寧にお話しくださいました。
きっかけは子育てをしたいという気持ちからです。子どもが欲しかったんですよね。
不妊治療をずっとやっていたのですが、何年ぐらいやったんだろう…2、3年ぐらいかな。ただ薬の関係もあって 妻の体調にも響く。加えて、毎回結果を病院に電話して確認する。それで「ダメでした」って毎月聞くのを繰り返して。今月もダメでしたと。そのうちプレッシャーに感じてしまって、やっぱり結構きつかったですね。
だから「まあ、もうそろそろ諦めてはどうだろう」っていう…うん。 2人での生活もいいんじゃないの?みたいな感じで不妊治療を辞めたんです。
それで、じゃあ何で里親制度を知ったかっていう話になると思うんですけれども、それは1番最初、確かラジオで知ったのかな。里親制度というものがあるよって。
それで「あ、そういう制度があるんだ」と思って「じゃあゆっくりだけど始めてみようか。その道、進んでみようか。」 っていう感じでした。
それは段々に…なのかな。児童相談所のいろんな研修とか受けながら考えることもあるし、ほら、やっぱり 周りは同じ境遇の人が多く 集まっていたから、こういう世界があるんだなって自然とその方向に向かわせてくれたというかね。自然な流れでしたね。
その研修も、最初に児童相談所に問い合わせて、その後登録までのレールに乗っていったって感じです。
じっくりじっくり一歩ずつでしたね。
彼女は今も働いていますけど、その頃は私も 働いていて、やっぱり夫婦で働いてるとなかなか委託は来ないのかね、なんて話をしながら過ごしていました。じゃあ、仕事を辞められるかってなると「ちょっとそれは現実的じゃないよね」って。すると「このままずっと来ないのかもね」っていう話を繰り返していたような気がする。
それで、私が仕事の方向転換しようかなって気持ちが芽生え始めて「じゃあ、仕事を辞めてから 1年間はフリーで過ごす。もしその間に、里親の話があったら、里親の道を選びます」っていうような話をして仕事を辞めました。
そうしたら、3月に仕事辞めて、翌年の3月に連絡がありました。
もう働こうと思ってたよ(笑)
それで僕たち夫婦の考え方としては、私の方が年上なので先に定年になる。だから彼女の方が 長く勤められるし、彼女自身も働くことを希望してるから彼女はそのまま勤め続ける。その方が収入源を長く保てるなと、そんな感じでしたね。
周りからは柔軟とも言ってもらうけど、でもやっぱり僕自身仕事を辞めるのだって恐怖でしたよね。
もう本当、同僚とかにはクレイジーかと思われてましたよね(笑)
そのぐらいの覚悟でした。
いえ、実はそういうイメージは無くて、タイミングが違えばたぶん彼女が仕事を辞めていたでしょうね。本当にいろんなタイミングが重なって今のこの生活ですね。
あとは、そうですね、父親の死っていうのも大きかったかもしれない。コロナの少し前に亡くなったんですけど、それもあって色々と考えましたね。
最初のうちは毎日が休日で、すごい楽しかったんですよ。どこ行くにも空いててね。
それで、自分のことを何でもできると思ってたら、いざ、できないのね。あれ?なんでなんだろう。それで結局その頃はよく走ってました。今でも続いていて、筋トレもしてプロテインも飲んで。子どもが来たらそのパワーに対峙する体力をつけておきたいっていう気持ちがありましたよ。
一方で思い出すことも多くて。仕事を辞めたことによって今までの楽しかったこととか思い出すわけですよ。同僚たちは仲良く 一生懸命やってる中でね、自分だけリタイアしちゃって、何かそういう気持ちに苛まれる。果たしてこれで良かったのかな?とか、この選択は間違ってないかなとか。最初の1年はそういう瞬間も結構多かったですね。
あ、50歳を境にっていう気持ちもあったんだ。
リアルな話、僕の収入だってなくなっちゃう。 恐怖でしたよ(笑)
覚えてますよ、最後の給料明細を見て、これが無くなるんだって思ったこと。
でもね、よくよく考えてみたらその給料で何やってたかっていうと、結局飲食で使っちゃてたんですよね。それを考えれば、現に生活はできてるし、色々と変わりましたね。
里親登録から3年ぐらい経っての連絡だったけど、いざ目の前にしたら正直悩みました。
やっぱり自分の人生が変わるじゃない?責任もあることだし、自分に育てられるのかなって悩んで。
全然平気。だからもう僕次第っていう。
色々考えちゃって、要するに50歳の男が 育てられるかって。
そこは非常に気にしました。
いえ、これというものがあったわけではなく、徐々にですよね。
「よし、大丈夫だ」っていうスタートではなくて、「一つ一つやってみようか」っていう感じですかね。
まず1番心配だったのが料理ですね。私、50歳まで ご飯も炊けなかったんですよ。それどころか簡単な料理も全然できなくて。妻も毎日働いていて、毎日二人で外食 を楽しむって生活をしてましたからね。そんなんだから、いざできるのかって。児童相談所の人にも毎回話をしていたんですよ(笑) そうしたら、そういう時は作り置きをしておけば大丈夫って言われて、そこで初めて「作り置きっていうのがあるんだ」みたいな状態ですよ。
それで、もうこれはやるしかないっていうっていう感じでした。最初は野菜炒めとか…
今でもそうなんですけど、見ないで作れるのはこのぐらいなんですよ(笑)
あとは、クックパッドとか便利なものがあるから、それを使って。
あとほら、お肉とかでも冷凍するなんて発想が無かったから、今日これを買ったら買ったで、「全部使わないとダメだ。じゃあ、何作る?!」って慌てちゃうんですよね。
でも、冷凍とかにもしていいんだとか分かって「最初からそういう話してよー」とか、そのレベルでしたからね。
だから1番大変だったのは、今も続いてますけど料理。でもI君は好き嫌いがあんまないっていうのはすごく助かるな。なんでも食べてくれる。
今はこれでいいかな。できる範囲で手をかけるものがいいんじゃないかなって。社会に出て、こんな美味しいものあるんだっていう風になってくれればね。
働いて帰ってくる妻への配慮としては、帰ってくる頃に食事を出して、でもそのくらいかな。洗濯は彼女が全部やってくれるので、 あとの料理や掃除は僕の役割かな。
夏休みになってから毎週プールに行ってるんですけれども、私がプールなんて高校以来行ったことなくて。一方彼は、今スイミング習ってるんでプール慣れしてるんですよね。だから泳ぎも「そうやってやるんだ」って感心しちゃってるっていうような状況です。浮き輪を持って行ってたんですけど、この前穴開いちゃったんで持って行かなかったんですよ。だから抱っこしながら入れてね、それでいいのかもしれなって思いました。いいんですよ、あれがね。水の中だったら軽いから抱っこがずっとできる。
それが最近の楽しい思い出かな。
普段、家ではいつもレゴをやってますね。今日もやっていて、手先が器用なんですかね。
あとは最近カブトムシを飼っています。
どちらかというと、じっくり何かをやる方ですかね。この先いろんな経験とか体験とか、知識もついてきて、いろんなことに向き合っていく姿が楽しみですね。
委託から幼稚園に通うまでの半年ぐらい、1日中一緒に過ごしていましたが、その間は本当に濃密でしたよね。毎日、今日は何やるかって考えて、公園行ったり。
あとはこう、順序通りに家事が進まなかったりね。 自分のやりたいことができない、思っているタイミングで出かけられない。
うーん、それは大変でしたけど、土日は妻が面倒をみてくれたり、そういった意味では助かりましたよね。寝かしつけも妻がしてくれていたので、その辺は協力しながらですね。
あとこれは今もなのですが、帰ってきた妻に甘えが強くなってしまうこと。男の子だからなのか、やっぱり母としての女性を求めているのか。本当に大変です。
でもこれは男とか女ではなくて、役割を2人で協力してってことなのかな。
小さなことでも、いいところをたくさん見つけていくっていう感じです。いいとこを見つかったら褒めてあげる。単純に成長を褒めたりもね。
あとさっきもあったのですが、抱っこを心がけてますね。だから朝起きると私の方に、来ますね。なんかそういった肌のスキンシップが意外と大切なのかなって思っています。
価値観で言ったら、ものすごい変化ですよね。だって僕の収入がなくなっちゃっても、「あ、これでも生活でるんだ」って思えてる。
妻の方も2人で生活してる時とはもう全然違って、母親になってますね。お世話愛みたいなものが出てきてるのかしらね。
だから仕事から帰ってくると、2人でくっつきながらレゴやったりテレビ見たりしてる。うちの妻は結構さっぱりしてるタイプなんですよ。物静かなタイプ。だから当初はどうなるのかなと思ってたら、想像と全然違ってね。可愛くて可愛くてしょうがないみたい。
普段、運動とかあまりしないから体力的にも弱いのかなと思ってたら、I君と一緒だとどこにでも行っちゃいますね。炎天下、公園へ虫を探しに行ったり。
あー、そうね…何って声をかけようかな。
「まあ、こっち来てみなよ」って感じですかね。「大丈夫だよ」って、そう、それしか言えないかな。
やってみて分かったことがたくさんですね。
そうそう、逆にI君は女性が働くものだと思ってる可能性があるから、これからの経験で色んな選択があることを知ってもらえたらいいかな。
I君が、将来僕みたいになったり(笑)
繰り返しになりますが、50歳で仕事を辞めて里親の道を選びました。色んな思いもありましたが、飛び込んでしまうと新しい生活がそこに広がっていて、日々新鮮な日常生活を送っているっていうのが、今の現状です。
私自身、今、里親になって、非常に誇りを持っています。
誇りを持てる、そんな制度なのかなっていう風に思っています。
逆にこれをやるために、日々健康でなければいけない。子どものパワーと対峙していくには、やっぱり自分の健康も大切です。だからなのか里親の皆さん、若々しいんですよ。
里親に限らず、どの家庭でも一緒だと思いますけど、子育てにあまり不安を持たないでもいいのかな。 って、自分に言い聞かせて頑張っています。
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