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里親へのインタビュー

里親へのインタビュー
【特別養子縁組】
Nさんご夫妻 里父Rさん(50代) 里母Hさん(40代)  
Kちゃん(取材当時3歳) 

社会的養護=普通の子育てと変わらない

「ママにそっくり!」開口一番、思わず言ってしまったほど、不思議なくらいKちゃんはママにそっくり。
どうしてこんなに似てくるのか…お話しを聞くうちに、なんとなくわかってきました。
「日常」…この言葉はご夫妻から何度も出てきた言葉で、Kちゃんとの日々を大切に積み重ねてこられたからこそ、血の繋がりをはるかに越えて、深い絆の家族になっているからだと確信しました。
里親になるきっかけから、委託、そして特別養子縁組成立を経て、現在までを、天真爛漫なKちゃんにもインタビューしながら、にぎやかにお話しをお聞きしました。

 

きっかけ…そして始動!

妻:
不妊治療を6年ほどしてました。養子縁組のNPO団体も検討していたけど、それもどうなんだろう…って考えていた時に1枚のチラシに出会いました。
私の職業は学校の教員で、たまたま学校から保護者あてに配られた配布物が「里親になりませんか?」という里親啓発のチラシだったのです。

――まさに運命のチラシだったのですね!

夫:
里親をやりたいと言ってきたのは妻のほうから。不妊治療もつらそうだったし(治療は)もういいんじゃないか、里親制度というものがあるなら、自分もこどもを育てたいし、一回話を聞いてみようと。
妻:
そこでは里親家庭をテーマにした映像上映や質疑応答の時間などがあって。
そこに参加して「里親になる!」って決めて、それからは研修、実習とまっしぐらに1年かけて登録しました。
夫:
一番鮮明に覚えているのは乳児院での実習。あの時に「里親をやりたい!」って本気で思ったから。こどもと一緒に遊んだり、ちいさい子のお世話をしたり、本当に楽しかった。男の子とは楽しく遊べたけど、でも女の子の接し方がよくわからなくて、「実際に女の子の委託があったらどうしよう」って内心ちょっと心配で(笑)
妻:
私も乳児院の実習で0歳児のお世話をさせてもらいました。
隣の部屋の1歳くらいのお子さんがこっちに来たくて来たくて仕方がなくて、ガラス越しに張り付いてずっと離れなくて私を見ていて。
「あぁ、こんなに小さいのに甘えたくても甘えられない寂しい気持ちを味わうなんて…」と、ものすごく切なくなって。
一人でもご縁があれば、育てていきたい!と強く思いました。

晴れて登録…ご縁があるまで

妻:
登録して丸1年はまったく紹介がなくて(笑)
でもそういうものだと思っていました。どんな気持ちで紹介を待っていたかというと、登録したばかりで里親同士の繋がりもまったくない、なんの情報もなかった私は「里親」って実際どういうものなのか知りたくて、地域里親会のファミリーレクに参加すると、そこに里子さん達がたくさんいて、里親さんとの関わりを見せてもらいながら、里親ってこういうことなんだ…と勉強させてもらいました。

どんなお子さんを希望していたの?

妻:
学校の教員をやっていたので、男女問わず12歳くらいまでなら…と。養育里親でも養子縁組里親でも、ご縁があればどちらでもいいと思っていました。 主人は「女の子だとどう接していいのか…」ほんとに心配していたみたいです(※注 今はメロメロです♡)

紹介があったときの気持ちは?

妻:
4ヶ月のKちゃんのお話をいただいたとき、嬉しくて思わずその場で即答しちゃいました。でも児相は「じっくり夫婦で話し合ってください」と(笑)
夫:
初めて写真を見たとき「お目々がぱっちりで可愛いな。会ってみたいな」
妻:
「目が澄んでいて、すごくきれい」「早く連れて帰りたい(笑)」と思いました。

防護服を着て交流~コロナ禍の委託~もうなんとかするしかなかった

妻:
当時はコロナが爆発的に大流行して世界中が大変な時。コロナ禍でほとんど会えなくて、Kちゃんには生後9ヶ月でやっと初めて会えるようになったのに、窓越しの交流がしばらく続いて。
入浴介助の練習も出来なかったし、離乳食も食べるのを見ていただけ。それも、泣いて全然食べてなかったね(笑)
会うときはいつも防護服。Kちゃんにしたら、私達すごく怖かったと思う。そういう社会状況だったから1ヶ月でいきなり委託になって…!
「どうしよう!」とか「わからない!」とか言っていられなくて、もう自分達でなんとかするしかなくて…。そんなドキドキのスタートでした。

さぁ!赤ちゃんのいる生活が始まった!

妻:
主人には8歳下の妹がいるんです。主人がこどもの時に、共働きだった両親を手伝って、妹のお世話をしていたこともあり、お風呂にも入れていたというので、迷わずお風呂は主人に任せました(笑)
離乳食はネットで調べまくりました~!
Kちゃんは離乳食をあんまり食べないって聞いていたから、少しずつ作ったのに、来た初日からめっちゃ食べて(笑)
私は毎日ひたすら離乳食用のおかゆを煮ていました(笑)

いざ子育てしてみて理想と現実のギャップ

夫:
もともと理想なんてなかったよね。子育ては出たとこ勝負だと思ってたし。妹の面倒を見ていた時とは違って「あれ?この歳ってこんなに大人だったっけ?」という驚きはあったね。
妻:
夜泣きがあったので、眠れないことが大変でした。
育児は楽しかったけど、コロナ禍で遊べる場所もなくて、すごく孤独を感じていたんです。その中で里親しっかりサポートで里親さんと繋がれたことはありがたかったです。それまでは、かかりつけの病院もわからなかったから、Kちゃんのつかまり立ちが始まって、口をぶつけて血が出てしまったとき、どうすればいいのか、どこに連絡すればいいのかわからなくて結局、仕事中の主人に「どうしよう!」ってあわてて電話したこともあったね。あの時、主人が冷静で助かった…

しっかりサポートの存在

(※しっかりサポート…埼玉里親会が行っている先輩里親による寄り添いサポート支援。https://saitama-satooyakai.jp/support.html

妻:
やっぱり何でも話せるのがすごくありがたかった~。小さい子を育てた経験のある方が来てくださるから。
あぁ、1歳になったらこうなっているのか…という、先が見えるのがいい。こちらは今しか見えてないから。終わりなんてその時は見えないから。ずっとこどもと向き合っているから、大人と話せたというのが大きかったですね。 (今は、里親しっかりサポートの支援員として活動されていますね。と言うと「サポートの支援があったから今があるので。」ときっぱり。)

こんなふうに育てたかった

妻:
自由に伸び伸び育てたいと思っていたのに、現実は…口うるさくなってます~(笑)
自分の感情と、こどもの感情がぶつかり合ってしまう時、こんなはずじゃなかった…と思うときもあります。委託直後のお世話の大変さと違って、今ちょっとしんどいかも。
仕事だと全然許せることが、我が子ではなぜか許せなくて(笑)
こうしてほしいっていう思いが強すぎるのかな。
でもそういう時は主人が間に入ってくれて、私は外の新鮮な空気を吸いに行くんです(笑)
(――えー!穏やかなHさんでもそんなことがあるんですね!)

あぁ、家族になったなぁと感じた時

夫:
家に帰って来て、三人一緒にご飯を食べたりする生活の一部一部だったり、三人で一緒に過ごせる「日常」に、家族の実感がわきます。
妻:
「ママに似てるね!」って言われるようになったこと。
それと「パパ、ママ」って初めて呼んでもらえたときかな。
実際「パパ」って言うほうが早かったんですよー!(笑)
あとは、お互いの両親に会わせた時の、あの喜びようを見たときかな。

ご両親に里親制度のことを話したとき…

妻:
うちの両親は大賛成でした。
夫:
うちは…血の繋がりを気にする両親だったので「そこまでしなくても二人で楽しく暮らせばいいんじゃないの?」と、すごく消極的でしたね。
だけど委託後、Kちゃんを連れて会いに行ったら…
もう一瞬で、超~メロメロになってしまって(笑)
最近、会いに行ったときお袋がコソッと「あの時はそういう風に言ってごめんね。早く理解してあげれば、もっと早くうちに来れたのにね」って言ってくれたんです。
妻:
私にも言ってくれた! 今では遊びに行くたび、お菓子を袋にいっぱい用意してくれています。

親戚関係の反応は

夫:
おばが血筋を重んじる人で、今でこそ「いい子が来たわね」って言ってくれますが、当初は先祖代々のお墓参りにも「まだ来ちゃいけない!」って言われたこともあって…
でも本家ではKちゃんは大歓迎されています。

真実告知

妻:
詳しくはまだしてないです。
でも軽くは話していて、病気になってもすぐ治った時とか「健康に産んでくれたことに感謝だね」とか、年に一回乳児院に行って「ここでKちゃんと初めて会ったんだよ」とか「ここで可愛がってもらったんだよ」とか、うちに来たばかりの10ヶ月の頃から、わかってもわからなくてもそういう話はしていて、まだ本人からの反応はないけど、日々刷り込んでいます(笑) もうすぐ4歳になるので、もう一段階レベルアップした話を考えてはいるけど…今、なんでもしゃべっちゃう時期なので、どう話をするか、里親会で皆さんがどう話しているかをよく聞いてからにしたいな。 時期が今じゃないのかな…とも思ったり。
夫:
万が一、友達にしゃべってしまって本人が不利にならないように、慎重に時期を考えています。
妻:
今年も夏に乳児院に行って、また同じ話をくり返してこようと思います。

子育てで嬉しかったこと・大変だったこと

夫:
最近おしゃべりが達者になってきて、言うことを聞かないんですよ。言葉ではもう負けています(笑)
でも「ダメなものはダメ」って教えていかなきゃだし、子育ては根気がいります。嬉しかったことは「日常」かな。仕事から帰ったら家にKちゃんがいる。それが嬉しい。ドアを開けたらKちゃんが駆け寄って迎えてくれる。帰りが早くなりました(笑)
ママに怒られた時こっちに来て、ちょこんと膝に乗ってくる。それが可愛くて…幸せを感じます(笑顔)
妻:
大変だったのは「自分の感情と向き合う」ことですね。
子育てをしていて、こどもと感情がぶつかり合うってこんなにもイライラするものなのかって。3歳児と同じ土俵に立ってはいけないのに、めっちゃ立ってる(笑)
でも…寝るとき謝ります。「ごめんね」って。
嬉しかったことは、いろんな初めてが見られること!
初めて立つところとか、初めて食べることとか。
あぁこんなことが出来るようになったんだーっていう「日常」が本当に嬉しい!
妻:
Kちゃんに「家族の絵を描いて」って言うと、パパ、ママ、Kちゃん、じぃじ、ばぁばを描くんです。それが家族だって思っているみたい。あとは実家の猫のチョビまで描いてる!(笑)

特別養子縁組

妻:
もともとKちゃんは特別養子縁組前提でうちに来てくれた子で、正式委託半年経って縁組に向けてスタートしたんです。
手続きも、かかった期間も半年くらいで、すごく順調なほうだったと思います。
裁判所の面接で「夫婦仲はいいですか?」って聞かれたね(笑)

(Kちゃんにもインタビュー♪)
パパが保育園に迎えに行くと泣いちゃうのはなんで?

Kちゃん:
ほんとは、ねてるときにきてほしいから。
(パパに早く来てほしいからだそうです!)
妻:
ママが迎えに行くと「まだ早い!」って怒るのに!

ママの料理で好きな料理は

Kちゃん:
オムライス!
妻:
前にケチャップでアンパンマンを描いてあげたら「違う!」って大泣きされました(笑)

好きな食べ物は

Kちゃん:
あまなちゅ♪(甘夏)
妻:
えっ?食べさせたことないけど(笑)

今、里親になろうか…と考えている方へ

妻:
不安もあると思いますが「ひとりじゃない」です。
社会的養護=普通の子育て・普通の家族・普通の家庭。
家族になる楽しさを味わう。
でもそれは、里親登録をしないと見えない世界。
知らない世界が広がる。Kちゃんがいなかったら多分こんなことは味わえなかったよねってことがいくつもあります。
サポートがしっかりしているので、安心ですよ。
夫:
生活は一変するけど、進んでいくしかないから。
あまり気構えなくても大丈夫です。 (――ありがとうございました)

編集後記

里母がフルタイムで働きながらの子育て、そして特別養子縁組。
これからますます増えていく里親家庭の形だと思いました。
Kちゃんを中心に、何げない日常に暖かな幸せを感じながら、愛情いっぱいに育つことは、どんなに幸せなことかとあらためて感じたひとときでした。

 

 

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