最初は結構不安でした
当時中学生のお子さんを迎え入れたMさんご夫婦。初めての子育てに思春期のお子さん。
里親になることをどのように決め、そして現在どのような生活をされているのか。
お子さんや養育の様子についてお話いただきました。
―まずは里親登録をされたきっかけをお伺いできますか。
- 妻:
- きっかけは主人でしたね。里親をやろうといったのは主人なんです。
- 夫:
- うちは子どもがいないので里親とかいいんじゃないかなって思っていて、もうそれだけですね。
―その話を聞いたときのお気持ちを覚えていらっしゃいますか。
- 妻:
- 里親ってどう?って聞かれて、当時私は養育里親とか全く知らなかったんです。養子縁組里親のイメージしかありませんでした。
でも主人から色々話を聞いて、養子縁組や養育など種類があることを知りました。
- 夫:
- それで里親入門講座に行ったんだよね。変な先入観を持たないで、ちょっとした情報だけでも聞いてみて、それから判断した方がいいと思いました。それで話を聞いたうえで、考えてみようよ。制度自体に賛同できないからやらないとか、賛同できるけど自分にはハードルが高いとか、理解してやろう、とか。そういう選択肢をちんとした情報を聞いた上で判断してはどうかなって話をして、里親入門講座を受けて。終わったら、「申し込もう」ってなったんです。
- 妻:
- (笑)そうだね。変なというか先入観みたいなものを私は持っていたので、入門講座に行って際の制度についてちゃんと説明をきいて、これならできるかもって思ったので申し込みをしました。サポート体制があるっていうことが大きかったですね。
それがあれば自分1人で抱えこんだり、夫婦2人だけで悩むんじゃなくて、 いろんな人に相談できるなっていうのはすごい安心感でした。
―元々里親制度についてご存じだったのでしょうか。
- 夫:
- 私が通っていた小学校の学区に児童養護施設があって、クラスメイトに児童養護施設で生活している子が各クラスに2、3人ずつ居たので、そういう環境の子がいるというのは知っていました。なので特別なことではなかったですね。
色々事情があって親と暮らせない子が居るっていうのは小さいころから知っていました。
―迎えるお子さんの希望年齢などはありましたか。
- 夫:
- 今の夫婦の生活状況から、小さい子を養育するのは無理だろうと話し合いました。
- 妻:
- 可愛いから小さい子もいいなとは思うんですけど、お互い仕事をしているのでそれは難しいかなって。
- 夫:
- そうだよね。小さい子だと日中一緒に居られないので、ある程度自分のことができる年齢の子がいいんじゃないかなと考えて、中学生以上の年齢の子を希望しました。
性別は特に問わずでしたね。
- 妻:
- 初めから夫婦の方針はハッキリ決まっていましたね。
―そこからどういった流れでの委託だったのでしょうか。
- 夫:
- 最初は一時的にというお話で、一カ月~三カ月ぐらいの委託予定でお話がありました。
事情で元々通っている中学校へ通い続けるということで、その中学校は家からそう遠くはないところですけど、車で送迎をしていたんです。なのでそれがちょっと大変でしたね。
- 妻:
- この日はテストだから早いとか、私たちの今までの生活に無いパターンだったので。
- 夫:
- 一応仕事は自営業なので都合はつけられるかな、なんて思っていたのですが結構大変でしたね。予定の時間に迎えに行っても全然出てこなかったりして、おかしいなぁなて思ってたら「先生に怒られてた」とか(笑)
- 妻:
- どうしてもお迎えが間に合わない時とかは、学校に連絡して少し待たせてもらったり、先生の協力もだいぶしていただきましたね。
- 夫:
- その後、その子の家庭の事情で長期委託となり、18歳になった今も一緒に暮らしています。
―委託当時のお子さんは中学二年生。思春期にあたる年齢ですが、実際一緒に生活してみてどうでしたか。
- 夫:
- 来たばっかりの頃はよく喋っていましたね。今の方が静かかな(笑)
- 妻:
- 「これやっといてね」とか、お願いしたことはきちんとやってくれますね。でも今は自分の部屋で過ごすことが多いかな。
- 夫:
- ただスマホは自分の部屋に持って行かずにリビングでやるという約束なので、たまに来ていじったりはしてますね。
- 妻:
- 結構コツコツタイプで、言わなくてもちゃんと勉強するし、実は計画立ててやってる、みたいな子です。こなさなければいけないことは淡々と取り組んでますね。
高校に入ってあまり喋らなくなったというか、逆に言えば遠慮していたのかもしれないなって感じますね。
- 妻:
- 旅行もいろんなところに行ったよね。遊園地にも行ったんです。夫は絶叫マシーンが全然ダメなんですけど。
- 夫:
- もう途中から2人で行ってもらいました(笑)
―とても楽しそうな雰囲気ですね。
一方、これまでの養育で大変だったことはありますか。
- 夫:
- 中学生になってから受け入れたので何か問題が起きたときに、それが家に来たからそうなったのかとか、と悩むことはありますね。あとは生い立ちの過程で何があったのか、家に来る前のことは詳しく分からないこともあるので、その辺りが分からないことにより対応に大変さを感じることもありましたね。実際に私たちも子育てをしたことがあるわけではないので、今も悩みながらです。
- 妻:
- 高校受験も大変だったな。自分の受験のときとは事情がすごく変わっていてびっくり。なのでいろんな人に聞いて、地域の里親会でも聞いて、先に進学した人とかにも聞いて。LINEなどでも上手く繋いでもらって、私立高校の確約の取り方とか、県立高校のこととか、色々教えてもらいました。
他の地区の里親の先輩方にも同じ学年を育てている方がいて、メールでやりとりしたり、本当に心強かったです。
あとはしっかりサポート※も受けました。委託直後に受けてその後は、進学のための、奨学金についてとか。そういう話も聞いていたので、つい先日大学の奨学金の申し込みが来た時に「あ、これこれ」って余裕をもって受け取れました。
他にも、悩んでることを相談してみたら「ま、その年だったらそんなの普通だよ。 もうちょっと大学生とか大人になれば、そういうのも分かってちゃんとするようになるから、そんな心配しなくていいよ」って言ってもらって、それはすごく安心しました。
―身近なサポートは心強いですよね。
お子さんの変化はありましたか。
- 妻:
- 女の子っぽくなったかな。家に来たばっかりの頃は、「お洋服買おう」って出掛けても、自分で選べなかったんですよね。お洋服屋さんに行っても、私の後ろをずっとくっついて歩いて(笑)でも今は一緒に買い物行っても「これが欲しい」って、すぐ選べるようになったし、可愛いデザインのを買うようなったね。お休みの日にお友達と出かける時は、多分ちょっとお化粧してたり。
―お二人が養育をされるうえで大切にしていることはありますか。
- 夫:
- チャンスでしょうか。社会的養護が必要な子はチャンスが少ないというか、道がいっぱい分かれてるんじゃなくて、数本の枝分かれした選択肢ぐらいしかない場合が多い。だから、「こんなこともできる」とか、「あんなこともできる」とかっていう希望を持って、かつ、それが 「叶えられるんだ!」って思ってくれるといいなっていうのがあって。
ただ、家に来た時はその希望みたいなのが全然なく「何したい?」って聞いても、「わかんない」、欲しいものを聞いても「わかんない」っていう感じでした。それが最近、自分でやりたいことができて、そこは変わったし、これから大学進学する上で、どういう方向に進みたいっていうのを自分から話してきたから、成長したなって感じます。
- 妻:
- 本当に成長したよね。
- 夫:
- 進学してそこでお友達を作ったり、いろんな経験したりとか。お友達と旅行したり、ちょっと自立する感じになれるといいかなっていうのはありますね。
- 妻:
- そういう中でちゃんと挨拶しなきゃいけないこととか、そういうことができるようになるといいかな。
- 夫:
- コロナで集まる機会が減って人との関係が薄くなったりしたので、挨拶もそうだけど、社会から学ぶ機会も減っちゃたなっていうのはありますよね。だからそれを学んでほしいなって思います。でもお友達とは普通に喋ってるので、大人が苦手なのかな。
先生との面談の時に、直前まで お友達とわちゃわちゃ話してたのに、先生との2者面談になった途端に静かになって。
- 妻:
- 別人じゃないか!っていうぐらい大人の前だと静かになっちゃう(笑)これはこれからの成長かな。
あとは日々の変化も気にしています。なんかちょっとした変化ってあるじゃないですか。
うちの子はいつもコンタクトなんですけど、ある日常用のものを使わないで、ワンデーの使い捨てをつけていたんです。なので、どうして?って聞いたら「ちょっと目が乾いて痛い」って言うんですよね。もっと早く言ってよー!と思ったんですけど、多分そういう風に聞かなかったら、そのままずっと黙ってたのかなって。なので今日、眼科に行って目薬もらってきたところです。
―そういう些細なところを気づいてもらえると嬉しいですよね。
- 妻:
- 気づいてくれるのを待ってるんじゃないかなって感じることはたまにありますよね。変化というか、いつもとの違いみたいな。
―ご夫婦お互いの変化などはありましたか?
- 夫:
- 変化ではないのですが、昔から面倒見がいいですね。いろんなことに気づいてくれますし。僕も時々細かいことを言われちゃうんですけど(笑)
- 妻:
- (笑) 私から見て夫は、家事とかお料理にとても協力的なので、とても助かっています。
あと自分自身も少し変わったかな。私は最初結構不安だったんですよ、ちゃんと里親をできるのかなって。でも本当にいろんな人の協力があって、児童相談所の人もそうだし、里親会とかしっかりサポートの先輩方とか。本当にいろんな人が支え合って、みんなが気にかけてくれてます。
だから高校進学決まりましたってLINEで送った時も、みんな「おめでとう」って言ってくれてすごい嬉しかったですね。
最初、1人で頑張らなきゃっていうのがあったんですけど、いろんな人を頼ることができて、 それは全然心配しなくていいんだって感じました。
- 夫:
- それで言うと僕は…「女子は大変だぞ」って感じですかね(笑)
最初、お年頃の子どもだし必要以上に避けられちゃうんじゃないかっていうのがあったんですよね。それで色々考えたんですけど、結構普通にしていれば大丈夫。
お風呂トイレはちゃんと鍵を確認したり、そういうことは配慮したけど、必要以上に距離を取ったりとかそういうことは全然せずに普通に過ごしていました。やってみないと分からないことはたくさんありますよね。
―最後にメッセージをお願いします。
- 夫:
- 子どもを迎えると、当たり前ですが子供がいる人の生活や社会っていうものがあることが分かって、そうすると自分の視野も広がりました。子育てをすることで自分も成長できましたし、色々心配事もあるかもしれないですけど、ぜひ一歩踏み出してみてください。子どもたちのチャンスやきっかけのお手伝いができればいいなと思っています。
※しっかりサポート … 『里親しっかりサポート事業』。先輩里親さんが、スキルアップや交流中、子どもが委託された直後の支援などをおこなっている。里親登録をして、子どもを受託する前から先輩の里親と繋がっていることで、安心感を持って受託することができる。