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里親へのインタビュー

里親へのインタビュー
【養育里親】
Iさんご夫婦(夫:Yさん 40代  妻:Mさん 40代)
※2022年8月現在の年齢

子育て経験は関係ありませんでした

大学に通う19歳の長女と知的にハンディキャップを持つ18歳の次女の子育ても一段落というタイミングで、小さな兄弟(現在3歳・4歳)を迎え入れたIさんご夫婦。どんな経緯で里親となったのか、日常の様子と共にお話を伺いました。

子育て経験は関係ありませんでした

家族構成を教えていただけますか。

妻:
我が家は夫婦の他に、看護師を目指している19歳の長女と知的に障がいを持った次女、そして現在3歳と4歳の兄弟を里子として迎え入れて生活をしています。
迎え入れた兄弟は2人とも発達に遅れがあるので、本来の3、4歳であればなんとなく物で遊んだりもできると思うのですがそれが難しく、些細なことで喧嘩が始まったりして実子も含めて賑やかです。

現在6人で生活されているのですね。 どのような経緯で里親になられたのでしょうか ?

妻:
私たちは長女を授かるときに時間が掛かって、その翌年に年子で次女を授かることができました。それから18年ぐらい経って子育てに一段落ついたとき、これから夫婦の時間を持つという選択肢の他に、また新たにもうひとり育てたいとなという思いもありました。ただ年齢が40代半ばだったこともあり色々試みたのですが結局子どもは授からず、その時に夫から里親の話を受けました。最初私は全然乗り気ではなくて(笑)でも色々と話を聞いていくうちに「あぁ、なるほどなぁ」って考えるようになりましたね。元々もうひとり育てたいという自分の気持ちとも一致したんだと思います。
夫:
僕が男の子を育てたいっていう気持ちは正直ありました。自分自身も3人兄弟だったので。でも下の子に障がいがあるからすぐ3人目というのは難しくて…。妻にもだいぶ負担が掛かってましたから。それが落ち着いてきてそろそろ次の子どうかなって話をしていたのですが、うまくいかず里親の話を僕から伝えました。
妻:
夫婦で話し合い、まずは入門講座(※)を受けてみることにしました。児童相談所による詳しい制度説明や里親さんの体験談を聞けたのはすごくよかったです。

―それが最初だったのですね。その後はどうされたのでしょうか。

妻:
児童相談所の人ともよく話をして、研修・実習に進みました。印象に残っているのが児童養護施設の見学。施設はTVで何となくしか見たことがなかったけど、実際に中を見学したら生活の場が姉弟であっても男女別だったり、ピアノを習いたいとか外食に行きたいと希望してもすぐには叶いにくいんだなって知りました。見て初めて知ることが多く、研修の意味は大きかったですね。

―その後里親登録されるにあたり、迎え入れる子どもの希望はありましたか。

夫婦:
何もなかったですね(笑)
妻:
娘たちの年齢の兼ね合いもあるのであまり大きい子ではなく、イメージとしては小学生ぐらい。その他は短期・長期・男女も障がいの有無も。希望する条件は、ほぼ無かったですね。それもあってかその後、登録してから二か月経たないうちに児童相談所から連絡がありました。

―まずは当時2歳のお兄ちゃんを迎えられたのですね。実際お子さんを迎え入れてみてどうでしたか。

妻:
実の子が居るからこそ、その違いに大変も大変。半年ぐらいは本当に「こんなにか!!」っていう違いと、何をやっても伝わらない大変さ。寒い時期なのに布団は掛けないし、寝ないし、とにかく泣いているし。
夫:
関係なかったですね、経験は(笑) 本当、子育て経験は全く関係無かったです。
妻:
本当だよね(笑)まるで違う。自我もあるし、これまでの本人なりの生活習慣もある。 それが我が家にきて色々変わるから全てに対してとにかく泣いて、1日中何をやるにも泣いて。お風呂もご飯も寝るのもそうだし、靴下を履けば外に出られるっていうのが本人の中にあったみたいで、朝起きれば「靴下靴下」って泣いて。そうじゃないんだよ、って理解してもらうのに1年ぐらい掛かったかな。

―生活が変わりますよね。大変な事はありませんでしたか。

妻:
そうそう、ちょうどコロナ禍が始まるあたりだったんです。大学がリモート授業になり、長女が家で過ごす時間が多くなったので大変な時は手伝ってくれて助かりましたね。
夫:
僕は仕事で日中居ないので、関われるときについ甘やかすじゃないですか。そうすると築き上げたものを壊されたって妻に怒られてしまうんですよ(笑)
妻:
自分の中で3カ月、6カ月っていうタイミングで悩むことはありました。歯車がうまく合わず、子どもの要求にうまく応じてあげられず、何をやってもダメかぁ…って。
夫:
3時4時まで夫婦で話し合いをしたこともありますね。

―その大変な時期をどうやって乗り越えたのでしょうか。

夫婦:
時間だと思います。
夫:
妻がよく言ってました。「悔しい」って。
妻:
一度決めて、途中で投げ出すのが嫌なタイプなんです。もちろんそれだけじゃなくて他の家族もいるし、本人の成長や変化があったりすると嬉しくて、「もうちょっと頑張ろう」って。
夫:
次女の時もそうやって一歩一歩頑張って強くなったので、同じ感じだと思います。 僕は、今日何があったこうだったって妻の話を聞いてあげる事しかできないんですけど ね。
妻:
ちょうど昨日、上のお兄ちゃんが布団を汚してしまって。その片付けをしていたら、長女が「ママ、片づけしてくれてるね」「きれいにしてくれたね。何か言うことない?」ってお兄ちゃんに言ってくれてたんです。私と子どもの二人だけだったら「良いよ、良いよ」って済ませちゃうところを、姉弟の中でのやり取りとして伝えてくれているのを見て嬉しかったですね。
お父さんがDIYした柵も、もうすぐ越えちゃいそう
妻:
こんなに泣くのかっていうぐらい全てにおいて泣くし、思いが通らないと泣き叫ぶし、実子たちはそんなに泣かなかったので泣かれるってこんなに辛いんだなって思いました。上の子が家にきてもうすぐ3年になりますけど、やっと最近話をして「これはこうだからダメだよね」って伝えて納得できるようになってきました。下の子も泣けば良いというところから、泣いてもダメなものはダメなんだよって伝え続けて、ようやく最近伝わりつつあるかなと感じます。

―正に根競べですね。2人目の里子として弟を迎え入れたときはどうだったのでしょうか。

夫:
下の子の方がおとなしいのかな、と思いきやそうではなかった(笑)
妻:
それまで生活していた乳児院からは「活発ですよ」って言われていたのですが、交流の時も泣かれずスムーズにいってたし、家にきて丸二日はリビングに座って静かにTVを見ているような子で、「あぁ、手掛からないなぁ」と思っていたら、3日目から エライことになって。こういうことね!と思いました。
夫:
活発だったねー。
妻:
凄かったですよ。物をなげたり手が出たり。プラス泣いて泣いて、噛み癖がなかなか無くならなくて。今でもまだ手は出ちゃうかな。上の子はどちらかと言うとおっとりゆったりな子なので、話をすれば騒ぎながらもなんとか伝わるって感じなんですけど、下の子はまた違う大変さですね。色々喋れるので一見なんの問題も無さそうなんですけど、発達のアンバランスさにこれからサポートが必要だろうな、と思っています。

-それぞれ個性のある2人ですが、育てていくうえで意識していることはありますか。

妻:
本人たちに求めすぎてもダメなんだろうなと思って、本人たちのなすがままというか、無理のない子育てでしょうか。じっとしていたり、1つのことに集中するというのが難しい2人なので、本当だったらパズルをやったりとかじっくり座ってできる年齢なんでしょうけど、何かを教え込もうとはせず、本人たちに任せています。2人はこれから人に助けられながらの2人だと思うので、好かれる人になってくれたらいいなって。なんとなく、「居るといいよね」って思われる人になってほしいな。
夫:
本当にその通りで、なすがままにですね。
妻:
今は保育園だからまだ私で対応できる年齢だけど、もう少し大きくなってくると性の問題とか私での対応が難しくなってくるので、そうなったときはバトンタッチ。今は私がやるけど、ある程度になったら夫にお任せって夫婦で話をしています。

-そこまで先を見据えて話をされているのですね。普段の関わりの中ではどうですか。

妻:
生活の中で、嫌だと感じたら「ママはすごく嫌だ」とか「これしてくれたら嬉しい」とか、我慢せずに伝えてますね。泣けばいいってことじゃないと分かってほしいし、こち  らも言うことを我慢してモヤモヤしない。
夫:
子どもとしっかり向き合ってるからこそですよね。遠慮しないというか、はっきり伝える。
妻:
そこはモヤモヤしてたら私自身が対応できないと思ったので、きれいごとではなく、嫌と感じる事は嫌と伝えて、できたことは褒めるし、最近本人にやっと伝わってきたかなって感じます。例えば下の子の場合、ジュースを飲んでるときに危なっかしいからちょっと手を添えると「ちゃう」って、どけてくれって言ったり。半年ぐらい毎日毎日繰り返し。向こうも我慢せず主張するから、私も我慢せず危ないよって手を添えて、「お互い折り合い付けようよ」っていうのを当時2歳3歳の子どもたちとやってましたね。
仲良く並んでゲームをする次女と里子

―ご自身たちの価値観などに変化はあったのでしょうか。

夫:
子どもが、特に次女が生まれてから妻はすごく強いお母さんになったなって感じます。
妻:
(笑)50歳近くになって子育てが一段落ついてそこからまた子育てなので、体力と気力と気持ち、これは新たにやらなきゃっていう思いと、ここで倒れられないっていうのはありますよね。人生折り返しにきて逆に良い活力になってますよ。
夫:
よく「里親ってすごいね」って言いますよね。妻に「あんた何もしてないでしょ」って言われるかもしれないけど、里親って特別なことではないと思うんですよね。
妻:
自分でも人生においてこんなことをやるなんて思ってもいませんでした。上の子が健常で下の子が知的に障がいがあって、それで里子2人迎え入れてるって、なかなか無い人生だなって自分なりに思ってます。
夫:
確かにね(笑)

―その活力はどこからくるのでしょうか。

妻:
なんでしょうね。児相さんも親身になって良く話を聞いてくれますし、市役所でも福祉課や子ども課など親身に話を聞いてくれるし、それはありがたいですよね。
夫:
フォローが大きいっていうのはあると思いますよね。近くにも何人か里親さんがいたし、やっぱりどこか繋がっている、孤立しないっていうのが大きいです。
妻:
話ができる人がいるのは大きかったですね。

―近くにサポートがある子育ては心強いですね。実際里親になってみてどうですか。

夫:
んー。変わらないですかね。すごいねって言われるけど、実感がないです。すごく変な話んですけど、「パパ」って呼ばれてパパになる感覚なので、実子も里子もそんなに関係ないかな。
妻:
言ってたね。多分生んでないからこその感覚なんでしょうね。私とは違うけど(笑)実際大変だけど、楽しいですよ。
夫:
自分たちとしては全然特別なことじゃない。大変なのは奥さんだから、そのフォローは大事ですけどね(笑)
妻:
そうそう。私は子どもを見るから、私のフォローをしてって伝えました。
夫:
役割だよね。

―ありがとうございます。最後に、里親を検討されている方にメッセージをお願いします。

すごいことでも特別なことでもない。
あるがままを受け入れて一緒に生活しているだけ。
実子の有無に関わらずちょっとでも気にかかっていたら、少しでも興味があったら、まずは話(入門講座)を聞いてみて欲しいなと思います。

※入門講座 … 里親制度に関心がある方を対象に、埼玉県が実施しているもの。
内容は、里親制度の概要説明や里親による養育体験談の発表など。

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