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里親へのインタビュー

里親へのインタビュー
【養育里親】
Wさん(50代)
※2023年12月現在の年齢

子どもだろうとひとりの人

看護師としてフルタイム勤務、夜勤もこなしながらお母さまと協力して、高校生という思春期のお子さんの委託をうけているWさん。間もなく自立を迎える年齢の子どもたちをどのような思いで養育しているのか、3世代が一緒に暮らす生活の様子も含めお話を伺いました。

現在の家族構成をお教えいただいてもよろしいですか。

今は母と2人暮らしで、そこにお預かりしたお子さんはこれまでで4人になります。最初が10歳の男の子で、その次から 3人とも17歳の女の子です。

どのようなことがきっかけで里親さんになられたのでしょうか。

母は共働きをしながら、私や弟を育ててくれました。そのうち自身が定年退職をしたとき、同じような共働き世帯をはじめ、子育て世代を手助けしたいっていうことで、※ファミサポをしていたんです。私も母と一緒に住んでいたものですから手伝っていたのですが、しばらくしてファミサポの方から「里親をやってみませんか?」って進められたのがきっかけです。 私自身、未婚で子どももいないということもあり、自由度がありましたので社会的養護が必要な子がいるのであれば、お預かりしてみようという気持ちでした。
子どもを育てたことはもちろんないけれど、子どもたちの助けになればという思いもありました。

それはおいくつぐらいの時でしょうか。

49歳のときですね。一緒に住んでいた母は79歳のときです。
里親になることについて母は「お前がやりたければ」って言ってくれました。私は夜勤もある仕事なのですが「食事や洗濯などの家事は手伝うよ」って、母のその一言で決心しました(笑)
お預かりしているお子さんの年齢を聞いて「難しい年齢を」って皆さんによく言われるんですけども、そこには私たちの家庭の状況や考があって。また母は幸いにしてすごく元気なんですよ、出歩くことが大好きなぐらい。私も夜勤をしてるから、日中2人が家に居ない時間があるんですよね。そうなると、家に居る時間の長い小学生や中学生の場合、今の私たちの生活リズムだと難しい。テレビを観せて放ったらかしじゃあ、家に来た意味があまりないような気がして。だからもう少し自立している子がいいねって、母と話して、高校生のお預かりを希望しました。最初は10歳のお子さんで期間は短期だったのですが、高校生の3人は家から高校に通い、学校を卒業して巣立っていきました。

実際に里親登録をして委託までの期間はどのぐらいありましたか。

えーっと、約半年ぐらいかな?
最初に10歳の子がすぐ来て、それからあっという間の5年でしたね。
委託が来るまでは、もうドキドキでした。最初の子は男の子で、初めての委託だし「何をしてあげればいいの!?」っていう気持ちだけしかなかったですね。食べる物もそうだし、過ごし方もそうだし。 里親登録をする際の研修では、色々な感情を表出させる子が多いなどの話も聞いていたんですけど、どういう風に声をかけたらいいのかなとか考えましたね。結局その子は10日間ぐらいのお預かりでした。こう言ってはなんですが、すごく楽しかったんです。 自分も子ども時代を振り返る感じで「小学校の頃って何して遊んだっけ?」とか「休みの日は親とどう過ごしたっけ?」とか。そのうち自分も「じゃあ楽しんでしまおう!」みたいな、そういう感覚で過ごして、本当にあっという間でした。
一方で母は戸惑いもありつつ、でもとてもシンプルに考える人なので、初めてのことに「気を使いながら、見守りながら」という感じで、でも楽しんでたと思います。

その後、生活スタイルの異なる高校生を迎え入れられたのですね。

そうですね。私たちが希望しましたし、高校生を迎え入れるにあたって想定内と言えば想定内だったんですけど、やっぱり大人に近い年齢ですし自分のやりたいこと、したいことをはっきり言える年齢ですからね。ストレートに言う子もいるし、私たちの顔色を見ながら言ってくる子もいたりして。やはり小学生との違いはありますよね。
あと直接的な養育とは違うのですが、学校のシステムが自分の時代と変わっていて、そこに慣れるまで大変でした。
これまでに就職した子も、進学した子もいたのですが、就職の際は進学よりも更に早い段階で資料集めをしなきゃいけない。正にそのタイミングで家に来た子がいて。色々あって進学希望からの就職に進路変更した子だったので「今から急いでどんどんやっていかないと、間に合わないよね!」といった感じで、履歴書や資料をパソコンでダウンロードしたりとか。私は本屋さんで買うといった経験しかなかったので「え?!ダウンロードって…あー、そっかそっか、そうなるのね」っていう感じで(笑)

今、学校によっては手紙もダウンロード式だったり、連絡網もLINEだったりしますよね。

色んな事がデジタルですよね。だからもう、とにかく頑張って情報を集めるしかないっていう感じでした。本人は、方向性をどうするかの心積もりはしていたので「じゃあ、とりあえず情報を集めよう」と言って、希望する会社の事や方針も調べて。そこから面接対策で、私の今まで働いてきた社会の経験を教えいったという感じです。
進学の子も、何から手をつけていいんだろうっていう状態だったのですが、※埼玉県里親会が進学のサポートをしてくれていて、それは良かったなと思います。奨学金も色々充実していることが分かって安心しました。

二人三脚の進路決めでしたね。

本当に。進路が決まったあとに母に言われましたけど、私も子どもも表情がすごい変わったって(笑) 丸くなりましたよね。
進学希望だった子は高2の8月ぐらいから、プレッシャーもあってかキリキリし始めて。 コロナ禍で色々な制限もあったから1ヶ月ぐらい学校を休んだときもありました。その時は腹痛で休みたいと言って、でも病院で調べても特に問題は無く…。なのでこちらは「まあ、それはしょうがない」っていう感じで見守っていました。こればかりは本人がどこかで折り合いをつけて、学校に行くか、諦めるか、自分の中で決めるしかないんだからと思って。
色々あって学校にも呼ばれることもあったのですが、その…私自身は悪目立ちをしないように過ごした高校時代だったので、まさか学校から呼ばれる日が来るとは 思わず「あ、呼ばれるというのは、こういうことなのか。ここでこの人生経験をするのか。」と思いましたね。本当色々経験させてもらいました(笑)
こう思えるのは、私自身が親から否定をされずに育ってきたおかげもあるんだと思います。何をするにしても、例えば今の職業を決めるにしても「そっちに行かない方がいいわよ」とか、そういう風に言われたことはないんです。「お前が決めたならいいわよ」っていう感じで、それがあったからでしょうか。
それと話を聞いてくれる人の存在は大きかったですね。それこそ、学校に呼ばれる経験も初めてで、母に聞いても呼ばれた経験がないから 「しょうがないんじゃない?」しか返ってこないんですよ。そうじゃなくて、もうちょっとこう…学校で何を言われるかとか、どう対応したらいいのかとか、そういう経験値的になるもの教えてー!って、私は思ったんですけど(笑)その時に、同じ里親の立場である方に話を聴いてもらえたのは、それだけですごく安心感がありましたよ。他に※しっかりサポートやLINEなどでも色々相談に乗ってくれるっていうのが良かったですね。気軽に話を聞いてもらえて相談できるサポートは心強かったです。

一方で体調については大変だったというか心配でもありました。事前の情報で「お腹が痛いことがあります」っていうのは聞いていました。女の子ですし、その時期は子宮が成長する段階でもあるので、病気を抱えていたりその発見が遅れて、不妊症になってしまうことがあったら、それは嫌だなって、すごくすごく思っていました。なので、職業柄もあってちょっとでも「痛い」って言ったら病院に連れて行くようにして。特別なことではなく、親となる、保護者となるっていうのは、こういうことなんだろうなって思ってやってましたね。ちゃんと診てもらえばこちらとしても安心ですが、ネガティブに言えば、子どもを追い詰める形になると思うんです。本当は何でもないのに不調を訴える。でもそれは自分の心の中で、自分を見つめ直して、本人が解決しなきゃいけない。だとしても医学的に問題がないっていうのは、やっぱり本人もちょっと安心するのかなと思いましたね。
そんなやりとりをしていたのですが、暫く経って嬉しかったのが「身体のことをちゃんと話せるようになるのはいいよね」って子どもから言われたことです。この時には、やってきてよかったなと思いました。婦人科系の話をちゃんとできるようになって本当に良かったと思います。女同士でもなかなかね、言えないことだと思うんですよね。だから、うん、言えてよかったな。
こんな私でも支えられればと改めて思いました。

ありがとうございます。
お母さまは何か生活の変化などあったのでしょうか。

そうですね…母自身はそんなに変わりはないのかな。洗濯の回数や料理の量が増えたとかはありますけど。食事で言えば女子あるあるで、ある日「ダイエットしたい」と 言ったり、その子によって食べられないものがあったりして、食事の面で色々気を使ってたのでその点は大変だと言ってましたね。他にも、おしゃれを意識しだす年齢なので、数時間で直ぐ着替えて衣類を洗濯に出しちゃう。しかも「こんなワンピース、どうやって洗うの??」みたいな(笑)慣れるまでは大変だったと思います。
母は昭和の初めの頃の生まれで戦時中だったから、食べ物をはじめ、とにかく物が大事。だから、次々いろんなものを使うという発想がはまずない。プラスチックのスプーン1つにしても洗ってもう一回使うぐらいの発想なので、多くの物を使い捨てる感覚も大変だったと思います。大人になれば、貴重な経験だったと思ってくれることもあると思うんですけども、思春期真っただ中の子どもからしたらうざったいですよね(笑)そのお互いのギャップを、肌で感じながらの生活です。

そうそう、ギャップの1つと言えば母は食べることに対してネガティブに捉えない。戦中だったので、食べ物をとても大事にしているし食べることが大事、食べなきゃ生きていけない、ダイエットなんてそんな考えはないんですよね。
一方、思春期真っただ中の女子高生は「食べたら太ってしまう」と気にする世代。この二人に朝から喧嘩されましてね。何気ない流れで母がぽろっと「太ったわよね」と言ったもので、もう朝からバチバチの喧嘩(笑)私は「えー…」みたいな感じで。母はただただ素直に言っただけ、でも子どもは鬼の形相。「学校に行かない」となってしまったのですが、戦時中で食べ物が今より大事だった時代を生きた母の感覚を伝えつつ何とか諭して、結局遅刻して行きました。
ただ、世の中にはいろんな人がいると思ってくれたら良いかな。
それと、今の子どもたちはコロナ禍で、自分したいこと、行きたいこと、それこそ文化祭とか体育祭も、できなかったり制限してやってきてますよね。
なので、部活もバイトもさせてくれない、何もさせてくれなかったってならないように、せっかく描いていた高校生活がちゃんと送れるように、友達関係や社会の楽しい部分を感じて、自分の進みたい進路選択に立ち向かえるように、私自身がなるべくイエスマンでいようかなって思っています。甘いということではなくて、その子に寄り添って、イエスマン。「これがやりたい」って、理由がちゃんとあるものに関しては応援しようと思っています。

その他に養育で心がけていることはありますか。

そうですね、冷たい言い方に聞こえるかもしれないけど、やっぱり巣立っていく子たちなのでそのことを前提に、ひとりの人として接した方がいいのかなっていうのは常に考えてますね。
ある程度大きくなってから家に来ているので、子どもから見たら親ではないし、はっきり言えば自分の意思で来たわけでもない。そんな子に上から目線で言ったって、そりゃ伝わらないよね、と思ったので、1対1の大人として「こういう理由でこうだから、あなたに伝えているんです」とか、そういうのは心がけてます。
なので「子どもだから」っていうのは、何の理由にもならないんですよ。だって、子どもになりたくてなっている訳ではない、これから大人になるわけだから。
10歳の子の時もそう思いましたね。確かに子どもではありますけど、年齢に関わらずひとりの人であること。委託を受けるときは、最初の心構えですかね。

ひとりの人として認めてもらっていることを実感できると嬉しいですよね。

自分の言葉を聞いてくれたり存在を認められることは大きいですよね。そこからがスタートだと思っています。逆に任されることで自信になるじゃないですか。小さなお手伝いでも任されることで、存在が認められてるっていうことに繋がったり。自分がいる、 自分を大事するっていうことに前向きになって欲しいかな。

これから楽しみなことはありますか。

そうですね、ただただ、一社会人として頑張ってくれればいいな、ということですかね。うん、それだけですね。「普通」でいいんです。普通っていうのがどれだけ大変かっていうのは、もう身に染みて私もわかってますから。それだけを願っています。

ありがとうございました。
最後にメッセージをお願いします。

もし里親になることを迷われているなら、社会的に子どもをサポートするものに触れてみるのもいいかなと思います。ボランティアもありますし、とにかく自分から行動してみてください。私も乳児院などに行きました。
里親になってからは「とにかく濃かった」その一言です。もう、濃いです(笑)母と話していても出る言葉は「濃い」。時間感覚を忘れるぐらい。最初に来た男の子も、10日間ですが、今思い返すと「そんな短かったっけ」っていうぐらい。大変なこともありましたけど、過ぎてしまえば楽しかった時間です。今こうやって笑えるのは、サポートもいっぱいあったからこその成功だと思うんですけど、でも、きっと失敗しても楽しいんだろうなと思います。迷われている方はぜひ行動してみて下さい。

※ファミサポ … 
ファミリーサポートの略。育児の援助を受けたい人と育児の応援をしたい人が、お互い会員となって一時的に子どもを預かる会員組織のこと。

※里親会 … 
レクリエーションや研修、サロンのほか、里親さん同士の支援サポートなど幅広く活動している

※里親しっかりサポート … 
委託予定の子どもと交流中や、新しく子どもを迎えた方など、里親が孤独にならないように先輩里親が行うサポート。未委託スキルアップ支援・面会交流中支援・委託直後支援・特例支援として進学就職のサポートなどがある。

(埼玉県里親会HPより https://saitama-satooyakai.jp/support.html )

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