里親へのインタビュー
【養子縁組里親】
Eさんご夫婦(夫:Dさん 50代 妻:Rさん 50代)
F君 7歳 Kちゃん3歳
※2022年12月現在の年齢
大人の喧嘩なんてこどもの笑顔で終わっちゃう
国際結婚をされたEさんご夫婦。お互いの文化の違いの中、二人のお子さんを受け入れ生活されています。この日F君は学校だったためKちゃんが同席してくれました。元気いっぱいに挨拶をしてくれたKちゃん。インタビューが始まると大人の輪の中で黙々と絵を描いたりおもちゃで遊んだりおやつを食べたり。とても和やかな雰囲気を作ってくれました。
どうして里親登録をされたのか、またその時の心境や現在の想いなど、Eさんご夫婦にお話を伺います。
―初めに里親になろうと思われたきっかけをお聞きしてもよろしいでしょうか。
- 夫:
- 私たちは結婚してからしばらく不妊治療をしていました。検査検査の連続で最初は毎週、その後も月に何回か通って治療は始まっていきましたが、そのタイミングで今住んでいる場所に引っ越しすることが決まったんです。そうするとまた新しい病院を探して初めから検査となり、お金も掛かるし、もう半分ぐらい諦めかけていました。ちょうどその時に市報で里親制度というのを目にしたんですね。
- 妻:
- 早速話を聞きに行って、最初は軽い気持ちだったよね。不妊治療の最後の頃には、養子っていう選択肢も良いのかなって思うようになっていて、制度についていろいろ調べ始めていました。
- 夫:
- そこからは早かったよね。すぐ児童相談所に連絡して入門講座を案内してもらい、研修・実習に進んでいきました。
- 妻:
- 早すぎてびっくりしたぐらいです(笑) トントン拍子で進んでいきました。
- 夫:
- 私が里親になろうと一番強く思ったのは、研修で児童養護施設の見学に行った時のことです。多分、今日見学でみんな来るからってことなんでしょうけど、中学生ぐらいの子が、施設の駐車場のところで一生懸命案内してくれているんですね。その姿をパッと見たときに、この子の将来とか施設で生活せざるを得ない今の現実だとか、そういうものがどうなっているのかって疑問を抱いたんですよ。
児童養護施設というものがあることは知っていましたが、実際施設に入ってみると思っていたより明るい雰囲気で、みんな一生懸命で。ただこの子たちの生い立ちについて色々考えさせられて、そこから研修で色々学んでいく中で社会的養護が必要な子どもたちの背景も知り、里親になろうと気持ちが定まりました。
不妊治療をしていて、自分たちの子どもはほぼ難しいということは分かっていましたし、実習で児童養護施設に行ったら、もうそこの子どもたちが可愛くて可愛くてね。二日間だけでしたけど夢中になって楽しかったですよ。帰りながら妻と、どんな子が来てくれるかな、とか話しながら帰りました。
- 妻:
- そうそう。でも登録からしばらく連絡が無くて、本当に来るのかなと不安でした。
- 夫:
- 妻は当初は男の子が希望って言っていた時期もありましたが、最終的には迎え入れられるならっていうことで、特に希望はありませんでした。
それでも登録から時間が過ぎて、やっぱり連絡がずっと無いと不安もあるじゃないですか。なので里親についての書物を読んだり色々調べたりして過ごしていて、しばらくたった頃に児童相談所から連絡が来ましたね。
―実際にお子さんを迎え入れてみての生活はいかがでしたでしょうか。
- 夫:
- とても嬉しかった半面、正直最初は周りの目も気になりましたよ。周りからしてみたらいきなり子どもが来ているわけですからね(笑) 隣近所の方は何となく分かっているわけですよ。しかしそこで地域や周りに隠してもしょうがない、親がこそこそする必要はない、私は堂々としていようと思いましたがやっぱりどこか不安で。
でもそれは後に里親会の活動をしていく中で、同じ境遇の人たちと出会って「堂々と胸を張っていいことなんだ」って思えるようになりました。吹っ切れた感じですね。下の子を迎えたときには、何を気にしてたんだろうというぐらいの気持ちでした。
- 妻:
- :そうだよね。今は堂々とできるけど、最初は慣れないし不安もいっぱいあったんです(笑)
- 夫:
- 私たちの地域は、子どもが委託されて最初の頃に同じ境遇の里親さんたちが集まって「どうですか?」って感じで話しをしたり、先輩里親さんに相談をしたりおむつ交換の練習をしたりする機会があって、それにだいぶ支えられましたね。
―登録前から委託後まで大きな心境の変化があったのですね。
ご夫婦の変化は何かありましたか。
- 妻:
- 夫婦二人だけの生活の時はお互いの国の文化が違うから、価値観が違ってぶつかるときもあったけど、今は子どもたちがいるから「ちょっと気を付けよう」ってなりますね。
- 夫:
- うね、それはあるよね。子どもたちの存在があるだけでね(笑) 子どもがいるのといないのでは全く生活が変わりましたよ。家の中も穏やかになりました。
二人とも元々意見を主張しちゃうタイプなのですが、お互いの文化の違いもあって子育てについては一歩引いたりして、どうしてもっていうところは「こうだよ」って理解を求めながらやってきました。考え方や意見の違いはありますけど、時間をかけて結構話し合いますね。
- 妻:
- 最初は意見が違っても、最後は二人でまとめるようにしてるよね。一緒にずっと話しあって考えあって、そうすると考えが変わるときもありますから。
それでやってみて良くなかったら、また一緒に話し合って。それの繰り返しですね。
でも子どもの将来のイメージは夫婦で同じかな。
- 夫:
- お互い性格をよく知っていますからね。だから何度も話し合っても意思が変わらないぐらい強いものであるならそこは尊重して。喧嘩も多かったですけど一緒にいる時間が長かったですから、お互いのことはよく分かっていますよね。
今だから分かりますが、夫婦二人だけの時に比べて子どもと一緒に過ごすって、張り合いが全然違いますね。会話も増えるし場も和むし。子どもたちのおかげで夫婦仲もよくなりました。嫌なことがあってもこの子がニコッてすれば解決しちゃうんだもん。
大人の喧嘩なんて子どもの笑顔で終わっちゃうんですから。
―お子さんを迎えると夫婦の関係性も変化しますよね。
お互いの変化は何かあったのでしょうか。
- 妻:
- それが、子どもにすーごく優しいんですよ。夫はせっかちな性格なんですけど、子どもに対してはそんなことなくて、じっくりじっくり話を聞いて、待って待ってとか。「えー!?せっかちな性格もこんなに変わるんだ!」ってびっくりしました(笑)
- 夫:
- そうだね(笑) 僕せっかちだったね。自分でもせっかちは認識していますけど、子どもたちにはそうじゃないね。
でもそれは児童相談所や地域の里親会での講習や研修に出て、色んなものを学んで吸収しようとしたことが大きかったと思います。一回の講義で忘れてしまうこともありますけど、子どもを理解しようとする気持ちは忘れないように夫婦でも心がけてますね。
妻:そうそう。やっぱり先輩里親さんとも話をしたりすると「あ、こうした方がいいかな」とか「こうしてみようかな」って思うことが多いので、集まりには出るようにしてます。
―委託後もなお積極的に学ばれているのですね。
- 夫:
- やっぱり委託という形で子どもを迎えること、社会的養護の子どもたちを迎えること、その子たちのために良い養育環境をっていうのはあると思うのでそれは常にね。
自分たちのところで生活している間のことだけじゃなくて、その先のことを考えてあげなきゃいけないからね。100%はできないかもしれないけど、子どもに対する愛情というか、幸せになってもらいたいっていう気持ちが根底にあるわけだからね。
―実際一緒に生活をしてみて大変だったことはありますか。
- 夫:
- 子どもが初めて来たときは、先輩里親さんの体験だとか本だとかそういったものを参考にして対応しようとするじゃないですか。で、もちろんその通りにやっていたんですけど、逆に力が入りすぎちゃうぐらいやってたんですよね。
- 妻:
- もうしんどかったね(笑)
- 夫:
- 遊びから学ぶって姿勢がとれなくて常に真剣で。だから、良いと思い込んで毎日毎日公園に連れて行ってあげてたんですよ。絶対、必ず、毎日。もう義務みたいに(笑)
- 妻:
- 本当一生懸命だったけど、今思うと辛かったよ。
- 夫:
- 毎日そんなことしてたから、今子どもに体力付いちゃって、それも大変なんですけどね。当時は加減が分からず。その時、妻が本当に頑張ってくれていて、もうやりすぎなぐらい毎日毎日ね(笑)
それで今度は夜に私が本を読んであげる。やっぱり読み聞かせは小さいうちから良いって聞いてましたので。でもやっぱりエンドレスなんですよ、終わりがないんです。こちらが読んでても寝ちゃいそうになるぐらいなのに、次から次に本を持ってくる。それで「これで終わりで消すからね」って言ってパチって電気消すと「わーん」って泣く。
今となっては笑い話ですけど、どこで終わらせて良いものか分からなかったですね(笑)
- 妻:
- これがどこまで続くの??って本当に大変だったんです。
- 夫:
- 子育ては長距離走なのに、短距離走のように毎日全力で走ってましたね。でも講習を受けたりして学んだことは守りながらやってましたんでね。夫婦でもよく話をしていました。
- 妻:
- 大人も大変だったけど、子どもも大変だったろうなって思いますよ(笑) ちょっと遊んで休憩したと思ったら、また一緒に遊んでって、お互い疲れながら全力でしたね。今思えば、子どももそこまでしたくなかったんじゃないかって思いますけど…いい思い出ですね。
―理論は学べても加減はやってみないと分からないですよね。
- 夫婦:
- 本当に。
- 夫:
- だから下の子が来たときは加減できたよね(笑)
―反対に嬉しかったことはありますか。
- 夫:
- 僕はもう毎日が嬉しいですよ。たまに出張へ行ったりして帰ってきたときに、時々なんですけど「あれ?!こんなに大きくなったっけ」って感じるときがあって。
毎朝起きて笑顔を見れた時が一番好きで幸せですかね。育てていると大変なこともありますけど、寝顔だとか朝起きてニコッと笑う顔を見て、服を着替えたりとか、成長を感じられるときですよね。一日一日大きくなっていくのが、一番楽しみですね。
- 妻:
- 日に日に成長していくよね。学校から帰ってくるとき、遠くに姿が見えて「ママー!」って大きな声で呼ばれるだけですごい幸せですよ。毎日が幸せですね。
-最初のころのご自身に声を掛けるとしたら、何と伝えたいですか。
- 夫:
- 「肩の力を抜いて」…かなぁ。でもその力みもよかったのかな(笑)
- 妻:
- 私は「大丈夫」かな。不安いっぱいだったけど、毎日本当に楽しいんです。
- 夫:
- だからそう言うと、やっぱり感謝だよね。児童相談所もそうだし里親会もそうだし、とにかく巡り合わせてくれた縁にだね。この気持ちを忘れずにずっとやっていきたいと思うし、この先もいろんな出会いがあって力になっていきたいなって思います。
―ありがとうございます。
最後にメッセージをお願いします。
- 妻:
- 家族の意味はそんなに難しくなくて、一緒に住めば家族だと私は思います。同じ場所で一緒にご飯を食べて、一緒に色々考えて、一緒に色々乗り越えて、そうして絆ができて家族になるのだと思います。気になっていたら話だけでも聞いてみてください。
- 夫:
- 僕たちは子どもがいることによって人生が変わりました。子どもの笑顔を見られるほど幸せなことはありません。笑顔を見られることが力になります。私たちの笑顔も増えました。来る前は不安もありました。本当にちゃんとできるのかな、本当に家で良かったのかな。でもそんなことも吹き飛ぶぐらい、子どもの笑顔が生きる力です。
迷っていたらぜひ飛び込んでみてください。
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