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里親へのインタビュー

里親へのインタビュー
【養子縁組里親】
Sさんご夫婦(夫:Mさん50代  妻:Tさん50代)
Eくん(中学3年生) Aちゃん(小学5年生)
※2024年2月現在の年齢

自立させることが最大のテーマ

中学3年生のEくんと小学5年生のAちゃんは、二人とも2歳の時にSさんご夫婦に迎え入れられました。様々なことに直面しながらも、都度乗り越えてきたSさんご夫婦。これまでの養育を振り返りつつ、これから里親になろうと考えている方へのアドバイスも伺いました。

最初に、里親になろうと思われたきっかけをお聞きしてもよろしいでしょうか。

子どもに恵まれなかったっていうのがありました。不妊治療をしていたんですけど、なかなかできなくて。 治療期間も1年ぐらいと短かったんですがやっぱり辛くて、結構早々に止めてしまったんですよね。
でも、中学校の同級生が里親さんだったので、里親制度っていうのは知っていたんですよ。
それでこういう制度があるっていうのは、彼女からなんとなく聞いてはいたんですけど、(ま、そういう道もあるのかな)って思いつつ、でも自分の子どもが欲しいっていう気持ちを諦めきれなくて。しばらく踏ん切りがつかないまま生活をしてた時に、主人が児童相談所で話を聞いてきたんです(笑)

元々ご夫婦で里親について話などはされていたのでしょうか。

してないです(笑)。
私の友達が里親だっていうことは話したと思うんですよ。 彼女のことがあったからかはわからないけど、そこから彼なりに調べてたみたい。それで児童相談所に問い合わせて、研修を受けて、登録までっていう流れだったかな。登録になって半年ぐらいでE君の委託のお話がありました。

委託まではどのような流れでしたか。

E君は生まれて退院したらすぐ、乳児院に 来たみたいですね。
実はE君がいた乳児院に登録前の研修で行ってるんですよ。そこでちょこっとだけお世話をしたんです。だから委託の話があって会いに行ったとき「この子、会ったことあるよね」ってパパと話してました。
それから最初は、平日に私が1人で乳児院に通って他の子とも一緒に遊びつつ、E君を中心に関わっていくという感じでした。そのうち、親子室で2人きりで過ごす。その過程でパパが登場します。休みの日、週に1回パパも一緒に行って、近くへ外出する。そんな感じで週3回、10時から4時頃までいたかな。数カ月して自宅に外出、外泊となって、E君はすごく喜んで、楽しんでくれたようでした。それから一緒に暮らし始めています。

E君を迎えてみて、生活の変化はいかがでしたか。

当たり前なんですけど、子ども中心の生活リズムですよね。大人だけで静かに気ままに暮らしてたのが全てE君中心になって、ご飯や寝る時間を全部彼に合わせて動く。
パパは仕事に出ちゃってて、でも当時おばあちゃんと一緒に住んでいたのでとても助かりました。理解もあって面倒見もいいおばあちゃんで、本当に感謝しかないですね。

協力してくれる人が身近にいると安心ですよね。
一方で大変だったことはありましたか。

小さいときはお腹が空くと「食べたい!食べたい!」って言ってぐずってしまう。眠気もあるのに、食べないとどうにもいられないから、やっぱりこれは大変でしたね。
あとはAちゃんの委託直後かな。E君が年長の時に当時2歳のAちゃんを迎えたのですが、実は交流している最中から拒否反応が 出てしまっていたんです。
最初Aちゃんは嬉しそうにしている感じはしたんですけど、交流の途中から変化があって。交流で施設から自宅に連れて帰る時、車に乗せるんですけどずっと泣いていました。 何回交流を続けても、毎回車に乗るときに泣いて、家に来ると私から離れず。「イヤ」とか「ダメ」って言葉が多くて、私も結構参っちゃいました。
ただその後に発達の遅れが分かって、自閉の傾向もあったから、こだわりが強くて変化に弱かったのかな。思い通りにならないと泣き叫んだり、融通が利かなくて大変でしたね。
成長と共に言葉も増えて、「ママ、食事の支度頑張って!」とか、今では気遣いのある優しいことを言ってくれることもあって。大分落ち着いて、元気に楽しく支援学級へ通っています。

兄妹2人の関係はどうですか。

お兄ちゃんは、 妹が来たことには全然抵抗がなくて。妹や弟が欲しいとも言っていたし、彼自身も喜んでいたと思うんです。でもAちゃんは最初の頃、お兄ちゃんを叩いたり引っかいたりすることがありました。それでも、お兄ちゃんは実際に妹が来て「自分より小さい子だから、手を出しちゃいけない」って、やり返すのを我慢してましたね。
時間を掛けてだんだんAちゃんも生活に慣れてくると、今度はお兄ちゃんらしく威張るようになって(笑)でも、優しいですよ。
実はE君も落ち着きがなくて大変な時期があったんです。自分の気持ちを抑えられなかったり、相手の気持ちを理解するのが苦手だったので、それが元で、トラブルになったり。E君が4年生の時だったかな、学校から度々電話が掛かってきて「あー、また電話が掛かってきちゃった…」って心境でした。友達と喧嘩をしてしまって、相手のおうちに謝りに行ったり、お友達関係でトラブルになることが多くて、(ちょっと、どうしたもんかな…)って悩みました。でも、その後成長と共に落ち着いて、今では仲の良いお友達が多く、上手くやってますね。遊びにも声を掛けてもらって、部活の子たちともすごく仲が良くて。 友達とうまく付き合えるようになってきて、うん。もちろん彼自身が成長したのはあるんですけど、周りの子たちも成長してるので、E君は「こういう子だ」だっていう目で見てくれるようになったんでしょうね、きっと。彼自身も優しいところはあるので、それもあって、うまくいくようになったのかなと思うんですけどね。
E君が6年生になったとき、担任の先生がすごく褒めてくれたんです。「いやー、E君可愛いですよ」って!職員室の掃除を一生懸命していて、それまでを知る他の先生も驚いていたみたい。先生も寛大な目で見てくれていたから、うまくいき始めたのかな。
いろんな大人の手を借りながら、EくんとAちゃんが今ここまで大きくなっています。

大変だった時期はどのようにして乗り越えたのでしょうか。

時間ですかね、やっぱり。
どっぷりと入り込んじゃうと自分も傷ついて大変だし、冷静に判断できなくなるのも良くないと思っていて、冷静にいるように意識はしていました。あとは子どもたち自身、成長と共にだんだん落ち着いていきましたね。
一時期本当に大変でしたけど、これから先も今までとは違う大変なことがあるかもしれないですよね。心配も色々とありますけど、でもまぁ「よくここまで来たなぁ」みたいな感じです(笑)

いっぱい積んだね!

大変なことだけじゃなくて、お兄ちゃんは結構笑えることが多くて(笑)
通っているスイミングで、夏のキャンプに参加したんですけど、お泊りの時って新しいものとか普段見慣れないものとかを荷物に入れて持たせたりするじゃないですか。着替えとか下着とか。それでキャンプから帰ってきたバス を出迎えに行ったわけですよ。そうしたら元気にバスから降りてきたんですが「ん??」と思って。私も知らないシャツを着て降りてきました(笑) 一緒に参加したお友達の、それも全然知らない子のシャツで降りてきてびっくり。
その場でその子にシャツは返したんですけど、その後も林間学校とか合宿に行くと必ず誰かのものを持って帰ってきて。色々やらかしてはくれましたね(笑)

何気ないひとつ一つが経験ですよね。

面白いのが2人の違いなんです。授業参観の後に懇談会で自分の子どもの席に座るんですけど、お兄ちゃんの机のお道具箱の中は鉛筆や紙があちこち入っていて。一方Aちゃんのも見てみようと思ったらすっごい整理整頓されてる。この違いはびっくりしました(笑)
びっくりと言えば、最近Aちゃんが持久走大会で走ったんですけど、5年生になったので、
距離は1キロ以上走るんですよ。今までは途中で疲れちゃって、手を下ろしながら走ってたんですけど、今年は距離が 伸びたのにも関わらず最後にラストスパートしていて、私の目の前を通り過ぎて行ったんですけど「えー!こんなに走れるようになったんだ」って感動して嬉しかったですね。やっぱり成長を見るのは喜びですね。

まだまだこれから楽しみですね。

ご夫婦お二人、自身や過ごし方の変化はありましたか。
夫は結構厳しい面もある人ですけど、年齢を重ねるごとに少しずつ丸くなってきたかな。
私で自身は変わらず、ですかね。
過ごし方は…年に何回かは家族で旅行に行ったり、家に居るときはそれぞれ好きなことをしていますね。たまに、里親会の方たちと一緒に遊んだりして、この間はAちゃんと同級生の子とカラオケに行きました。
日常は私が関わることが多いですが、旅行やどこかに遊びに行くとか、外食の時は、パパの出番ですね。それが役割かな。

養育をされている上で心がけていることは何かありますか。

里親を始めた時に、 一大テーマが『自立』だったんですよ。自立させるっていうことが最大のテーマだなと思ってたので、うまくできているかは別として、それは念頭には置いていました。子どもたちが自立するまでの手助けだと思っていて、やりたいことがあるんだったら、それを応援してサポートしてあげる。そういう風にしたいなと思っています。

これまでずっと明るくお話しいただいているのですが、不安はありませんでしたか。

そりゃ、ありましたよ(笑)
どちらと言うとポジティブな方だと思いますけど、それでも「これで大丈夫かしら」なんて思ったりもしました。若い頃は悪い方に考えて、クヨクヨすることもよくありましたけど、何か鍛えられちゃったんですかね、子どもに(笑)
色々経験して、人生積み重ねて、自分も強くなってきたんでしょうね、きっと。
それにちょっと後悔していることもあって…。
もうちょっとE君の話を聞いてあげればよかったな、って思っているんです。Aちゃんが大変だった時に、ちょっと掛かりっきりになってしまっていて、その時に彼の話をもうちょっと聞いてあげればよかったなって…。今から振り返ってみれば、私自身がもうちょっと冷静でいて、関わり方を考えられればよかったなっていうのはあります。

寒さに負けず遊べたかな!?

これから楽しみにしていることはありますか。

里親さんたちで女子会をしたり旅行に行きたいねって話をしています(笑)
今はまだ子どもたちも「一緒に行く!」っていう年齢ですけど、その先、子育てが落ち着いてからも楽しみですね。同じ立場だからこそ共有できる部分でいうのもありますしね。

ありがとうございます。
最後にメッセージをお願いします。

もし子どもを育てることになったら、子どもとよく話す機会を作ってもらえるといいかな。
子どもの成長を見ていて、やっぱり関係を築いていく上で、よく話をする、話聞いてあげる、そうやって関係を作っていくのがいいんだなって思います。
思春期になった時や、これまた受験ってなったときに、親子で話し合わなきゃ いけなかったりとかする。どういう進路を選びたいかって、そういう話もできるように、普段から、小さいうちからよく話せる関係を、ぜひ築いていってもらえるといいのかな。
あと里親同士の繋がりを持ってもらえるといいと思います。
子どもの成長とともに色々な出来事が起きて、子どもも里親も悩んだり躓いたりしたときに、その 話ができる相手って大切だと思うんです。もしかしたら別に里親じゃなくてもいいのかもしれないけど、 やっぱり里親や里子ならではの悩みというのも結構あったりすると思うので、その時に相談ができる相手がいるといいなって思って。幼稚園や学校で知り合ったママ友さんたちに加えて、里親さん同士のコミュニティを持っていれば、里親としてちょっと本音で話すこともできるじゃないですか。ベテランの先輩の話も聞ける機会もありますし、子ども同士も同じ年代ばかりじゃなくて幅広くお付き合いもできるので、里親会の行事なんかも、うちの子どもたちは楽しみにしています。
そして、そういうのを色々経験して、今度は自分たちが『ベテラン』って呼ばれるようになった時は、新しく里親さんになった方たちに、色々経験を伝えていってあげてもらえたらいいなって思っています。

まず里親になろうと思われたきっかけを教えていただいてもよろしいでしょうか。

はい、私たち夫婦は不妊治療をしていて、子どもは欲しいなと思っていました。元々障がいの子どもたちに携わる仕事をしていたのですが、様々な家庭の事情で社会的養護が必要とする子どもたちが居ることを知りました。そこで「もし、お母さんや家族が育てることが難しいなら、私が育てたりできないかな」と何回か思うことがあって、そんな選択肢もあるんだって、主人と話をしていたんです。私も働いていたので、仕事に生きるという選択肢もあったと思うのですが、そう考えたときに、やっぱり子どもを育てることをしたいなと思ったので、一歩踏み出しました。
仕事も区切りのいいところで辞めて、もう覚悟を決めるというか、自分の中で「よしっ!」って決心しましたね。

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