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里親へのインタビュー

里親へのインタビュー
【養子縁組里親】
Tさんご夫婦(夫:Yさん 40代  妻:Nさん 40代)
A君 8歳
※2023年2月現在の年齢

自分の型にはめず、そのままを受け入れて

水遊びが大好きなA君との日常を楽しそうに話すTさんご夫婦。結婚後、こどもはそのうち授かるだろうと思っていたのち、不妊治療に取り組むこと数年。そこから里親登録をされどのようにA君と出会い、どんな生活を送っているのか。Tさんご夫婦の子育て観やA君の様子をお聞きしました。

里親になったきっかけをお聞きしてもいいですか。

夫:
結婚後も共働きだったのですが、そのうち子どもも出来るだろうって過ごしていました。でも中々できなかったんですよね。
妻:
それで不妊治療を始めたんです。結婚して3、4年目ぐらいから始めて4年間続けましたが、上手くいきませんでした。それで夫の方から「こういうのあるよ」って里親の話がありました。
夫:
そういう制度があるっていうのは知っていたのですが、妻に話したら「あぁ!」って扉が開いたみたいな感じで、先が見えたというか光が差したという感じで表情が晴れたのを覚えています。

―最初からお二人の気持ちが一致していたのですね。

妻:
夫婦である夫と私は血が繋がっていないじゃないですか。でも家族ですよね。と、いうことは血が繋がってない子どもでも、家族になれるってすんなり思ったんですよね。

―そこからどのようにアクションされたのでしょうか。

妻:
色々調べてみたら児童相談所が実施している入門講座が少し離れた地域であったので、そこにすぐ申し込んで参加しました。その時に、もっと詳しく聞きたい方は住んでいる管轄の児童相談所に問い合わせてくださいってことだったので、パンフレットをもらって次の日に電話を掛けました。
夫:
そうだったっけね(笑)
妻:
覚えてないんでしょ(笑) そうしたらちょうど翌週、パパの休みの日に面談と説明を受けました。そこで研修の申し込みもしました。最短の日程で研修・実習に参加して1年後ぐらいには登録になったよね。

―お子さんの希望年齢などはあったのでしょうか。

妻:
未就学で男女どちらでも、と希望しました。発達障害などは小さいうちは分からないから、それはどちらでもいいって伝えました。元々不妊治療している時に病院の先生から「あなたは年齢いっているんだから覚悟してね」というようなことは言われていたので、自分で産んでも何かあるかもしれないんだから、そこは気にせずでしたね。
夫:
男女もそうですよね、自分たちでは選べないじゃないですか。それと同じですね。

―そこからA君の出会いに繋がるのですね。

妻:
うちの場合は登録から間もなく児童相談所から連絡をもらいました。数年待つ覚悟でいたので早くてびっくりしました。
夫:
そう、そうだった。「委託までは待つよ」って聞いていたので、驚きました。
妻:
そこから交流がスタートしたのですが、その前に詳しいお話を聞きに児童相談所に行ったとき、A君の写真を見せてもらってこちらも驚きました。乳児院の実習に行ったときに、夫が一番遊んでいた子だったんです。
夫:
そうそう。実習の時に妻は色んな子と手を繋いでいたのですが、僕も「手繋ごうね」って言ったらみんなが「キャー」って逃げて行ってしまって「嫌だ」とも言われちゃったり(苦笑) そういうのもあって落ち込んでいたところにA君が「抱っこして」って来てくれたんです。それですごく救われて実習を終えられたということがあったんです。それで児童相談所で写真を見たらその子だったので驚きでした。
妻:
本当に偶然だったんですけどね。
それで初対面の日に、パパが「A君!会いたかったよー!」って声を掛けたらA君の緊張も吹っ飛んじゃったみたいで、そこからすっかり仲良く遊び始めていましたね。

―A君を迎えてから生活やお互いの変化はありましたか。

妻:
強いて言えば…パパはA君に甘いんですよ。なのでパパは甘やかすというか受け止める存在、私はうるさく言う存在。でも甘えるのは私に、みたいな感じですね。
夫:
そうなんだよなぁ(笑) A君は一緒に寝てもくれないもんなぁ。
妻:
そうだね(笑) A君は来たときからずっと私にくっついていて、3歳を過ぎていたのに抱っこ紐でずっと抱っこしているような状態でした。家の中でも外でもずーっと。降ろすと「抱っこして!何で降ろすの!?」って、泣くのではなく活舌良くはっきりと言うんですよね。 実は今もまだ…朝起きて、リビングに連れてくるのは絶対抱っこなんです。目覚ましで起きてくるんですけど、台所で「おはよう」って言って、そこから抱っこです(笑)

―一見甘えているように見えますけど、きっとA君が安心できるルーティンなんでしょうね。

妻:
来て1年ぐらいは朝起きて抱っこ、からの30分はくっついてないと離れてくれなかったので、それを考えれば成長したね。
夫:
そうだね。色々振り返っても辛かったことって一つもなかったなぁ。
妻:
どちらかと言うと面白いことばっかりですよね。大人になると自分の家の中であんまり予想外の事って起きないじゃないですか。でもA君が来てから、朝起きたその瞬間から「えぇ?!」って予想外の事がいっぱいあって、「そう来たかぁ」とか「あぁ、私まだまだだなぁ」とか鍛えられてますね(笑)

-それはきっとハプニングを楽しまれているのでしょうね。

夫:
怒ったりにはならないよね。色んなことがありますけど、「そんなこともあるよ」みたな感じですね。
妻:
「そっかー、今日はこんな日なんだね。」ってね(笑) 以前、公園に連れて行こうと思って外に出たら、出てすぐの水溜りで遊び始めたんです。それもチャプチャプって程度じゃないんですよ。まずは靴ごと、上からジャンプしてジャボーン!って飛び込んで(笑) あ、じゃあ、これは汚れちゃうからお洋服脱ごうかって脱がせたら、「何これ!俺オムツ1枚楽しい!!」って様子で更に楽しそうにずーっとじゃぶじゃぶ遊んでましたね。結局公園には辿り着けずでした。
夫:
水が好きみたいで今でもたまにあるよね。水たまりを見つけると、お風呂に入るように座ったり寝そべったり、もう全身ビチョビチョですよ(笑)
妻:
横に転がったりもしてたね。

-注意したり止めたくなってしまう気もするのですが…

夫:
全然そんなことないですよ。やれやれー!って。着替えれば良いだけですし、満足いくまでやればいいよって思ってます。
妻:
私も、面白いなーって(笑) パパの言うように着替えれば良いだけだし、やりたいんだったらやればいいよって感じですね。これをやっても困る人はいない、誰にも迷惑をかけてない。「じゃ、やっていいよ」って。洋服も洗濯機が洗ってくれるし、靴もダメになったら買えばいい。
夫:
怪我と風邪だけ引かなかったらいいよね。その影響もあって今スイミングに通ってるんです。
妻:
家に来た頃から毎日毎日公園で水遊びしていたのですが、秋になったら流石に公園で水遊びができなくなってきて、それでも「水で遊びたい!!」って言うので、「よし!スイミングだ」ってことで(笑) A君と会った日から毎日が楽しいんですよ。

―A君の姿そのままを受け止められていらっしゃる様子がうかがえます。

妻:
自分の型にハマる訳じゃない相手を型にはめようとしたって疲れるだけじゃないですか。それよりも型にはめずにそのままを受け止めて見ている方が楽しいですよ。本当見ているだけで面白いんです。

―ご夫婦お互いの変化は何かありましたか。

妻:
夫が正直こんなにも子どもに甘いとは思いませんでした。昭和生まれなので、何だかんだ言っても怒るのかなって思っていたら、一回も怒ってないんですよ。
夫:
いや、本気で怒る場面が無いんですよ。
妻:
いや、あったでしょう(笑)
夫:
命に関わることもしてないし、迷惑掛けることもしてないし、だったらいいじゃないって。仕事から帰るのが遅いと2日間ぐらい寝顔しか見られなかったりして、そうするとやっぱり小さな変化とか成長が嬉しいんですよ。
妻:
ね(笑) だから怒る役は私なんです。
夫:
妻は働いているとき店長というポジションだったので、部下を指導したり厳しいイメージを持っていたのですが、A君を迎えた途端に「何でもいいよー!」ってぐらい寛容で、こんなに子育てを楽しめる器の大きい人なんだなってビックリしましたね。

―新たな一面の発見ですね。
今のご自身が里親登録前の自分に声を掛けるとしたらどんなことを伝えたいですか。

妻:
「早く登録した方がいいよ」ですかね。子育ては本当に体力が必要なので、1歳でも若ければそれだけ体力も若いのですからね。体力はある方だと思うのですが、それでも子育てをしてみて体力が欲しいって思います。
夫:
僕は「怖がらなくていいよ」でしょうかね。最初やっぱり不安だったんですよ。これ、自分に本当に出来るんだろうかって。でも今になったら全然そんなことなくて、大丈夫だよって言うかなぁ。

―安心できる環境もあったのですね。

妻:
里親になると里親会や児童相談所のサロンなど自分の紹介だけじゃなくて、近くに住む先輩里親さんや同期里親も紹介してくれるので仲間もできて、本当にありがたかったですね。
夫:
それは思いましたね。地域の繋がりや色々なサポートがすごくて安心でしたよ。孤立しないしね。そうそう、自分の兄弟との交流もするようになりました。お正月に挨拶する程度だったんですけど、A君が来てからは兄弟家族が年に数回遊びに来たりもして、本当繋がりを作ってくれました。

―ありがとうございました。
里親を検討されている方にメッセージをお願いします。

妻:
私はこの里親制度に踏み込む前と踏み込んでからの印象が全然違いました。お役所感が強いイメージで入門講座に参加したのですが、思っていたほど堅苦しくなくて敷居もハードルも高くなかったので、ぜひ気楽に一歩を踏み出してもらえたらなって思います。
夫:
里親になってみて、毎日楽しくてしょうがないです。世界が広がりました。自分もそうでしたが、怖がる必要はないのかなって思いますね。ぜひ前向きに考えてみてください。

 

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