里親へのインタビュー
【養育里親】
Eさんご夫婦(夫:Jさん 40代 妻:Fさん 40代)
K君(12歳) Mちゃん(4歳)
※2024年1月現在の年齢
Eさんご夫婦は当時6歳のK君と出会い、2年後に実子のMちゃんも家族に加わりました。現在12歳になったK君は妹のMちゃんと共に元気いっぱいに大きくなっています。
里親となりK君を迎えるまで、そしてMちゃんが生まれ、4人となった生活の様子についてお話を伺いました。
はい、私たち夫婦は不妊治療をしていて、子どもは欲しいなと思っていました。元々障がいの子どもたちに携わる仕事をしていたのですが、様々な家庭の事情で社会的養護が必要とする子どもたちが居ることを知りました。そこで「もし、お母さんや家族が育てることが難しいなら、私が育てたりできないかな」と何回か思うことがあって、そんな選択肢もあるんだって、主人と話をしていたんです。私も働いていたので、仕事に生きるという選択肢もあったと思うのですが、そう考えたときに、やっぱり子どもを育てることをしたいなと思ったので、一歩踏み出しました。
仕事も区切りのいいところで辞めて、もう覚悟を決めるというか、自分の中で「よしっ!」って決心しましたね。
元々子どもが好きというのもありますけど、結婚して5年、6年と夫婦だけの生活だったので、大人だけという意味では楽じゃないですか。だから、「もうこのままでも別に困ってないし、いいかな」っていうのはあったみたいです。けれど具体的に話をしたり、当時ちょうど放送していた児童養護施設を題材としたテレビドラマを観たりしていて、強くは言わなかったですけど、主人の気持ちも「あ、そういう風に向かってるんだな」っていうのも分かりました。私も主人も35歳ぐらいの時だったかな。それで入門講座に参加して、という流れでしたね。そして登録になって2週間後ぐらいに女子高生の委託の話が来たので、びっくり。正直、男の子とか女の子、そういうイメージもはっきりしていなくて。まさか女子高生だとは思わなかったです(笑)
児童相談所から連絡をもらったとき「ええ!?女子高生ですか?!」って、何度も確認しちゃいました(笑)それぐらいびっくりしましたけど、特別支援学校に通っている子だったんですよね。それで里親家庭が決まらなければ就職が決まらないという状況だったみたいです。私たちも全く予想外でしたけど、その子が高校3生の夏頃に連絡をいただいたので、「3月まで一緒に頑張るか!」って。主人に相談してみても「いいんじゃない」ってなったので、3人での生活が始まりました。
ちょうど夏休み期間だったので、家でずっと過ごすような生活環境だったのですが、いい意味で受動性が高い子で、家に来て2日目にはもうソファーに寝っ転がって過ごしていました。早々に馴染んで、もうずっと喋っていましたね。だから、こちらから話しかけにくいとか、そういうのは全然なくて助かりましたし、楽しかったなとも思います。
ただ年頃の女の子ですので、男性である主人との距離感や生活面での配慮に大変だった部分は正直ありました。それでも主人は柔軟でいて、でも毅然と立ち振る舞ってくれていて、
…すごく助かりました(笑)
結局その子は就職を決めるにも紆余曲折ありながら、なんとか就職をして、児童相談所のケースワーカーさんもすごく力になってくれて無事巣立っていきました。
そうしたら次の日に電話が掛かってきて「忘れ物かな?」って思ったら、新しい委託のお話でした。それが今一緒に生活をしているK君との出会いです。
うちは実際一緒に生活を始めるよりも前段階、交流のときが一番大変でした。交流を開始して最初は割と順調だったんですけど、ステップを踏んで家に長期外泊になったとき、やっぱり生活習慣やこれまで過ごしてきた家との雰囲気の違い、また彼が抱えているトラウマもあって、本人は戸惑いながらだったと思うんですよね。ある時から、ご飯とかよそって「この量でいい?」って聞いても「いいに決まってんだろ!いちいち聞くなよ」だったり、お茶を飲み終わってポンってコップを置いたので、飲み終わったんだなと思ったら「お代わりだって分かるだろ?早く出せよ」みたいな感じになっちゃって。
とにかく私とのコンタクトを受け付けない状態になってしまったんです。夏だったので水上公園に行って、そこで波のプールで流されたら「お前のせいで流されただろう!」みたいに、もう全部、自分の身の回りで起こってる悪いことは私のせいでした。
本当に急にそうなってしまって、それがすごい衝撃的で…。
K君が小さかったらオムツを変えるとか、食事を介助してあげるとかはできたけど、基本的なことはある程度自分でできる年齢だったのでお世話ができない。仲良くなりようもないという日が続きました。これからの交流をどうやって続けていけばいいのか、どうやって仲を深めればいいのか…本当に分からなくなってしまって。私のことは嫌いっていう状態で生活するのがいいのか 悪いのか、本当に考えてしまいました。
そうなんですよね。でも当時は本当に「どうしよう」って悩んでいて、児童相談所の担当の方にも相談しました。そうしたら、「エベレストに登るような子育てをしなくちゃいけないけど、まだ高尾山にも登ってないんですよ」って言われて(笑)
それを聞いたときに「そっか、私はまだ高尾山なんだ。このくらいで根を上げてちゃいかん」っていう自覚ができまして(笑) 更に「私たちが、極力 伴走していくので、色々考えますので、一緒に頑張りましょう」とも言ってくれたので、やれるだけやってみようと思いました。
そこから私の考え方も変わりました。それまでは「嫌われたくない」っていう思いが強かったので、どうやったら好かれるかっていうことを考えていたのですが、そういうことをやっていると色々と回らなくなってしまう。朝ごはんを出したら、「嫌いなものをなんで出すんだよ」って言われたりもする。でも、それを全部聞いていたら生活が成り立たないし、K君自身が、良い方向にいかないから、ダメなものはやっぱダメって伝えていくし、寄り添うところはしっかり寄り添うと決めて。自分も生きてく、生活をしていくから、私自身が生活できなくなったら、子どもも育てられない。そう思えるようになってからは、ちょっと楽になりました。
そんな流れでいざ委託が始まったのですが、嬉しいとか 良かったなっていうよりは、責任感の方が強かったですね。
生活が落ち着いた今、振り返ってみると、あの時もっとゆったりする時間も必要だったのかなって…。 こう、2人でぎゅーっとしながら何もしないで過ごす時間も必要だったのかなとも思うけれども、なんかもう、とにかく必死でしたね(笑)
小学校生活が始まってからも落ち着かない様子は続いていたのですが、コロナで3ヶ月ぐらい休校になって、一緒にゆっくり生活する時があって、そこでググッと落ち着いてきました。
家で穏やかに過ごせて、その休校が終わった後からは、学校から連絡がくることもほとんどなくなっていて。あの3ヶ月、何をしたって訳ではないんですよ。外に出掛けられもしないから、家の中で私と、当時8か月の妹と3人で過ごしてるだけの時間が、Kくんにとってはすごく良かったのかな。
少しドリルとか勉強をするけど、本人の好きな工作とかもできたりとかして。
Mちゃんが掴まり立ちをしているときに「 ちょっとだけ見てて」ってお願いすれば、ちゃんと見ていてくれたりして「ありがとね」って伝えられる。何でもない普通の、そういう生活がおそらくKくんにはホッと出来て良かったのかな。
何か決定的な出来事があったわけではないんですけど、本当に落ち着いていった感じですね。
正直、K君が1、2年生の時は懇談会などで学校に行くときは、親心なりにドキドキしていたのですが、5、6年生ぐらいになったら、私自身も気にせず居られるようになりました。
学校の先生から、「K君はこのクラスのムームードメーカーで、自然と友達が集まってきます」「ほんとに優しい子です」っていうのを書いてもらった時に、なんかすごい嬉しくって。そういう風に言ってもらえて、 本人も嬉しかったと思います。やっぱり振り返るとK君はとても変わったなと思うし、 元々はきっと優しい子だったのかなって。
そうそう、Kくんが家に来て2年程経った頃にMちゃんが生まれたのですが、私の妊娠初期、実はみんなにちゃんと言う前に入院してしまったんです。ただ、早めに自分が体調不良になるっていうことは伝えた方がいいかなと思って、 話はしてありました。K君はすごい喜んでいて、お兄ちゃんになるっていうのが嬉しかったみたいです。
でも、私の体調を気にして不安が強くなり、泣いちゃったりもしていましたけど、下の子が生まれるということに関しては、自分だけを見てもらえなくなる不安とかよりは、ほんと単純に、ただただ嬉しいっていう感じでしたね。
下の子が生まれてもK君には絶対寂しい思いをさせないっていうのを心に決めていたので、K君にはすごく配慮して生活していました。
K君はK君で妹をとても可愛がってくれたりしていましたし「可愛いな、愛おしいな」って思うからこそ、K君にも大切にされてるっていうのを感じてもらうように したいなって改めて思いました。
主人もアクティブになりましたね。外に出る回数がすごいなって。
色々なものを見せたり、連れていったり、一緒に楽しみたいっていう思いがあるんだろうな。私と2人きりだと、休みの日に「どっか行く?」って聞いても「俺は待ってるよ」みたいな、のんびりする感じでしたけど、今は逆ですね。一緒にたくさん楽しい思い出を作ろうっていう感じです。これは本当、子どもを迎え入れてみないとわからなかったな。主人は今K君とポケモンカードにハマっているんですよ(笑)誘われたらハマっちゃったみたい。他にも、家族みんな相撲が好きなので、TVで応援したりもしてます。
私自身も「子どもが楽しいと嬉しい!」っていう感情をたくさん感じられて、すごい幸せです。夫婦2人の時には味わえなかった幸せを、今いっぱいもらってるなっていうのは実感します。
子育てをしていると、まさか!?というような大変なこともありますし、想像できないことも起こるけど、それ以上に楽しく幸せな気持ちをいっぱいもらえます。山登りをするつもりでコツコツと、日々を積み重ねていってほしいなと思います。時には負けてもいいんです。でも辞めずにコツコツ進めれば。私は今、とても幸せです。
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