宝物…それは家族(前編)
里親登録後2年半、委託を待ち続けていたところに、ある日突然児童相談所から、里父さんへ生後6ヶ月女児委託紹介の電話が! その時、里父さんはあまりの衝撃に、身体中がブルブル震え、持っていた携帯電話を思わず落としそうになってしまったといいます。
今回のインタビューのキーワードは、赤ちゃんの委託、特別養子縁組、共働き、二人目養育。Jちゃん中心にあれこれ詳しく聞いてみたインタビューがこちら!
里親へのインタビュー
【養子縁組里親】
里母50代 Jちゃん(取材当時小6) Sくん(取材当時5歳)
宝物…それは家族(前編)
里親登録後2年半、委託を待ち続けていたところに、ある日突然児童相談所から、里父さんへ生後6ヶ月女児委託紹介の電話が! その時、里父さんはあまりの衝撃に、身体中がブルブル震え、持っていた携帯電話を思わず落としそうになってしまったといいます。 今回のインタビューのキーワードは、赤ちゃんの委託、特別養子縁組、共働き、二人目養育。Jちゃん中心にあれこれ詳しく聞いてみたインタビューがこちら!
―最初にどちらから里親をやってみようと思ったのでしょうか。
- 里母:
- 私です。私達はずっと不妊治療をしていて。かなり遠方の病院に通って最先端の治療をしていましたがある時、もうこれ以上やれることがないね、もう無理だねって思った時があって。特に夫はどうしてもこどもを育てたいという夢が大きかったので、このつらい現実に、すごく落ち込んでしまったんです。
私は以前からTVなどで里親制度のことは知っていて、大勢で暮らすのって楽しそうだなとか、そんな印象を持っていたので、出産を経なくてもこどもと暮らす方法があることはわかっていました。里親制度のことを調べていくうちに、どうやら県内で近々里親入門講座があるということがわかり「話を聞きに行ってみない?」と夫を誘ってみました。夫の反応は「行く!行く!」って(笑)。
実際に講座を聞きに行って、そのまま里親登録に進もうということになりました。
―初めての実習で実際にお子さん達とふれ合ってどんなことを感じましたか。
- 里母:
- すごく緊張したのを覚えてます。夫のエプロン姿を見るのも初めてで(笑)。
こども達がすぐに慕ってきてくれるんだけど、必要以上にくっついてきて。
あぁ、これが愛着の大切さなのか、これが社会的養護のこども達の実態なんだなと衝撃を受けて帰って来ました
―里親登録するにあたり、ご両親や親族の方の反応はいかがでしたか。
- 里母:
- 両家に反対されました。なにも今から子育ての苦労をすることはないんじゃないかという意見と、血の繋がりのない子を受け入れることに抵抗があったようです。だから私の親には事後報告。何を言われても私はやると言ったらやるタイプなので(笑)
最終的に義父は「2人で決めてやればいいよ」って言ってくれましたが、義母は最後まで嫌だったみたいです。面会交流が進んで、いざ長期外泊でこどもが我が家に来るとなった時も、何か言われるんじゃないかと、会わせるのを若干、躊躇しました。ところが…一目会ったら「可愛い~!」って(笑)。
―2年半、委託を待って、児童相談所からお子さんを紹介された時の心境はいかがでしたか。
- 里母:
- 最初の一報は、私が勤務中で児童相談所からの電話に出られなかったので、夫の電話にかかってきました。なんの前ぶれもなく突然、0歳6ヶ月女児のお話をいただいた夫は、あまりの衝撃に体がブルブル震えて、電話を落としそうになったんだとか。(笑)
―お子さんの第一印象は?
- 里母:
- 最初に写真を見せてもらった時、「え!こんな小さな赤ちゃんが…!」という驚きと、この子のここまでに至る説明を聞いて、「こんなに小さいのに…」という衝撃…内容は言えないんだけど、現実にこういうことが起きるんだというショッキングな思いが、可愛いって思うより先にきましたね。
初めての抱っこも小さすぎて怖くて、すぐ夫に「はい!」って渡して。(笑)
でも、すごく可愛かったから、「早く我が家に迎えたいな」って思って、どんどん面会交流に行って、乳児院の職員さんに言われたことを一生懸命やりました。
―赤ちゃんの面会交流って実際どんな感じなのでしょうか。
- 里母:
- 当時、私は仕事をしていたので、面会交流のために仕事を早退したり遅刻をしたり、有給を使いながら週2~3回通いました。
交流といっても、こどもがあまりに小さかったので、私に懐くために…というよりは、6ヶ月の赤ちゃんのお世話の仕方を教えてもらいに行くという感じでしたね。 小さいから仕方なかったんだけど「ごめんなさい…寝ちゃった」「ごめんなさい…熱が出ちゃった」と職員さんに言われて…乳児院に着いても面会出来ないことも多々ありました。
慣れないことをやりに行くので終わった後はいつもグッタリでしたね。 でもその後に仕事に行ったり。委託ぎりぎりまでは仕事をしたい気持ちもあったので、仕事にも行けるタイミングで交流にも行って…を毎週続けていました。
―職場の反応はいかがでしたか。
- 里母:
- 6ヶ月の赤ちゃんを迎えることを最初に話したときは、とても驚いていましたが、応援してくれました。当時は、里親の子育てのための育児休暇がなく、養育に専念するためには退職しなければなりませんでした。引き継ぎをしながらの交流はちょっと大変でしたが長期外泊の前日まで働きました。それと、正式委託の日程は交流の進み具合だったり、人それぞれなので、職場からの「いつ退職するの?」という問いに対して明確に答えられなかったのがしんどかったな。「いつ」が、交流のゴールかわたしたちにはわからないので。
―晴れて正式委託が決まったときの心境はいかがでしたか?
- 里母:
- 『Jちゃんを一日も早く我が家に!』と交流と仕事を両立させ、まっしぐらに進んできました。生後9ヶ月となったJちゃんを、待ちに待った我が家に迎えることができたときのあの喜び!
それなのに……委託前の長期外泊が始まって一週間後…。私に異変が…。
赤ちゃんを迎えて今までの自由な生活が一変してしまったこと、小さい赤ちゃんがいることで思うように外出できないことがあまりにも辛すぎて。
ガラッと変わってしまった生活と、お世話に明け暮れるだけの日々に「私、この生活をずっと続けていくの?」って。待ち望んでいたはずの未来が、先の見えない絶望に変わってしまったんです。
夜、こどもを寝かしつけたあとは毎日ずっと号泣・号泣・号泣…。
そこに帰宅した夫が…びっくりして…絶句していました。
後で「あの時は死んじゃうんじゃないかと思った」って。そのくらい私が打ちひしがれて絶望的な様子だったんだと思います。
―ええっ!それは大変!どうやって乗り越えたのですか?
- 里母:
- 私の気持ちがすごく落ち込んで、普段はひかない風邪をひいてしまって体調も悪い、自分の未来にも絶望…そんな最悪のタイミングで、委託直後の里親さんのサロンに誘われて。ここではネガティブな話をしてはいけないんじゃないかって思ったけど、初めて参加したサロンで思わず愚痴ってしまったんです。
するとそこにいた先輩里親さん達が「そんなもんだよ、みんな同じだよ」「風邪が治らないのは辛いよね」って、私の思いを全部受け止めてくれて、すごく救われたんです。聞いてもらえることがこんなに嬉しいなんて。その瞬間、サロンは私の命綱だ!と感じました。
それからはサロンは欠かさず参加し、色々なことを相談してきました。
児童館に行くと0歳児はこども同士が遊ぶというより、ママ友との関わりのほうが濃くなるから、どこの産院で産んだかとか、妊娠中こういうことがあったとか、0歳のママコミュニティに多い、そういう話題になったとき、「私はこうしたよ」とかアドバイスをもらったり。私は準備を全くしていなかったので(笑)うまく話題を切り替える方法とか、時には嘘も必要だよとか(笑)…本当にサロンがあって良かったと思います。あのときはしっかりサポートもなかったし…本当に助かった! それを考えると、今のしっかりサポートってありがたいなって思う。初めてのことに悩みながら失敗しながら手探りで子育てしていくところを、未委託の頃から支援があるなんて本当にありがたい!
―新しい生活はどのくらいで落ち着きましたか。
- 里母:
- 3ヶ月経った頃かな…離乳食とミルクとお世話で一日が大忙しだったけど、ペースがつかめるようになって少し自分にも余裕が出てきて。そうなると外出も楽しめるようになって児童館には毎日のように通って。児童館には本当にお世話になりました(笑)
―真実告知のことを教えてください。
- 里母:
- Jちゃんが3歳になりたての、TVで出産シーンを見ていたときのことです。「産むのってすごく痛いんだって」って私がJちゃんに言ったんです。
「Jを産んだときもすごく痛かったの?」ってJちゃんが聞いてきて。これは嘘を言ってはいけないなって思って「ごめん、お母さんは産んでいないんだよね。違うお母さんから産まれたんだよ。」って初めて伝えました。
Jちゃんの最初の反応は「あーそうなんだー」って。
えっ?すんなり受け入れてくれたの?と思ったら、その後に「お母さんから産まれたかったなぁ…」って。「お母さんも産みたかったよ」って私も言って。でもその後なんて言ったらいいか困っていたら、主人がすごくスムーズに「じゃあ産まれちゃえばいいじゃん!」って、私の服の中にJちゃんを入れて、そこから出るという『産み直し』をしました。すごく楽しい雰囲気で初めての真実告知は終わりました。
…でもここからが大変でした。2~3日ごとに「Jはお母さんから産まれたんだよね」って聞いてくるようになり、その度に私は「お母さんから産まれてないんだよ」という返事をするという日々が半年以上続き、Jちゃんにしてみたら毎回否定されてモヤモヤしていたのかな…だんだん荒れ始めて、かなり本気の赤ちゃん返りをするようになったんです。バブバブって赤ちゃんみたいにしゃべってみたり、3歳なのにミルクを飲みたがったり、ハイハイしたり…
いろいろあったけど最終的には真実告知を受け入れてくれて、大きくなるにつれて「Jはお母さんから産まれたんだよね」って全く言わなくなりました。
そして先日「Jはお母さんから産まれたと思っているから。そう思って生きていくから」ってきっぱり言われたことがあって。12歳の子がそういう風に自分の中に落とし込んでいるんです。そうだよね、やっぱりそう思いたいよね…って。
これから成長と共に、産みの親のこととか、新たな疑問も出てくるかと思います。でも今はいろいろ聞いてこないのは、きっと今が幸せで今を満足しているからかな…と思います。
Jちゃんは保育園の頃から「あなたの宝物は?」と聞かれると、おもちゃでもなくゲームでもなく、必ず『家族』って今でも答えるんですよ!私が産んでいないとわかった上で、この家族を大好きでいてくれているんです。
―さぁ次回はJちゃんとの特別養子縁組、そして弟のS君との出会い…その時里母さんは何を思ったのでしょうか。後編へつづく!